2019 Fiscal Year Research-status Report
リニア中央新幹線の政治過程-政治と経営の論理の攻防-
Project/Area Number |
18K01436
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
藤原 真史 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20366975)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 政治過程 / 新幹線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づく事業という共通性がある整備新幹線とリニア中央新幹線について、「『政治の過剰』の整備新幹線と『政治の過少』のリニア中央新幹線」という作業仮説のもと比較分析し、両者の政治過程の実態や異同の要因を解明することを主目的としている。 研究2年目である2019年度は、前年度に引き続き、図書や行政資料、新聞記事、国会や地方議会の会議録等の調査、分析や関係者へのインタビューに取り組み、整備新幹線とリニア中央新幹線の政治過程の時系列的整理を進めた。併せて、政治過程の叙述に次ぐもう一つの課題である、リニア中央新幹線のような民間主導プロジェクトに対する政治の関与や民主的な統制のあり方に関する論点提示を主眼に、海外事例の文献調査にも取り組んだ。 第一の点については、開業済みの整備新幹線の経緯の整理を継続するとともに、未開業でなおかつ地元当局の異議申し立てにより膠着状態が続く九州新幹線(西九州ルート)とリニア中央新幹線(静岡工区)の動向をより詳しく把握すべく、情報収集を進めた。公共事業方式を採る整備新幹線とJR東海が全額自己負担で建設するリニア中央新幹線とを比べると国や自治体の影響力に大きな違いが見られるが、費用負担という交渉材料に乏しい後者においても法的権限をもとに自治体が事実上の拒否権を発動しうること、受益と負担の分散や整備方式の違いが対立する利害の調整の態様に影を落としていること、などが観察された。 第二の点については、PPP(Public Private Partnership)として世界的に拡大傾向にある民間主導型インフラ整備の動向や具体的事例について、政治の関与や民主的な統制のあり方を探るべく文献調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、文献調査と現地を訪問しての調査や関係者へのインタビュー等により、整備新幹線とリニア中央新幹線の政治過程の実態や異同の解明、さらには民間主導プロジェクトへの政治の関与や統制のあり方に関する論点の提示、を目指すものである。 研究2年目の2019年度は、2018年度に進めた文献調査をさらに進展させ深掘りしつつ、その成果を反映して順次、現地調査や関係者へのインタビューに取り組む予定であった。しかしながら、研究計画の立案段階では想定していなかった学外機関での業務が入るなど現地調査等の時間が十分に確保できず、文献調査と資料収集を優先するかたちで研究を進めた。 現地調査や関係者へのインタビューの実施を2020年度に集中的に実施するよう研究計画を修正したこともあり、2019年度末の時点で文献調査は予定以上の進捗があるのに対し現地調査の実施は予定を下回ることとなり、やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、整備新幹線とリニア中央新幹線の政治過程について、前年度までの成果を踏まえつつ文献調査で事例をさらに深掘りするとともに、「政治の過剰」の整備新幹線と「政治の過少」のリニア中央新幹線という仮説の裏付けを得るべく、現地調査や関係者へのインタビューに取り組む。 民間主導型インフラ整備事業に関しては、文献調査の継続により政治の関与や統制のあり方への知見を得るとともに、国内外の具体的な事業に関する事例調査を実施する。
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Causes of Carryover |
2019年度には、研究計画の立案段階では想定していなかった学外機関での業務が入るなど訪問調査のまとまった時間を確保できなかったこと、他の用務での訪問時に一部地域の現地調査を実施したこと、さらには大きなものとして年度末に予定していた海外調査の実施を断念したこと、から旅費を使用せず次年度使用額として繰り越した。なお、現地調査の一部は電話等による調査で代替するとともに、文献調査と資料収集を優先、前倒しするかたちで研究に取り組んだ。 新型コロナウイルスの感染拡大防止の取り組みにより流動的な部分があるが、2020年度には整備新幹線とリニア中央新幹線の沿線地域の調査などの旅費と、文献調査の深掘りのための物品費とを中心に、次年度使用額を含め予算を使用する計画である。
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