2020 Fiscal Year Research-status Report
なぜブリュッセルはテロの巣窟と化したか――もう一つの「連邦制の逆説」?
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18K01441
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松尾 秀哉 龍谷大学, 法学部, 教授 (50453452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テロ / 分離独立運動 / EUとベルギー / トライバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は最終年であり、ここまでの調査、検討によってベルギーが「テロの巣窟」と言われるようになった重要なターニング・ポイントと仮定された2000年代初頭の新自由主義的改革の意図、その帰結に対する所感を当時の政策決定にかかわった官僚、政治家に、知人を介してインタビューする予定であったが、コロナ禍で断念した。 その代わりに、その知人が出版した英語本の翻訳を上程することができた。オンラインで訳者に確認を取りながら翻訳できたことは、コロナ禍ゆえの「ニュー・ノーマル」な翻訳であった。またその訳書についてのエッセイなども記すことができた。 他の研究面では、テロ以降のベルギー政治におけるテロの影響について検討を進めるうち、長期化した2019年選挙以降の連立交渉の中身をオンラインでできる範囲で検討しているうちに、フランデレンの分離独立運動に対するEUの政策決定の影響を見出だすことができ、それを国際政治学会での報告、さらにそこでの質疑応答を反映し、リバイズしたものを、市川顕・高林喜久生編で刊行することができた。また、別の共同科研の成果ではあるが(2019年に現地出張しインタビューできたのは、本科研の成果の一部)として、2016年のテロの直後に生じた、EUとベルギーの(ワロン地方の抵抗としての)分離独立運動の関係について臼井編において刊行することができた。 また、ベルギーの2019年以降の連立交渉の長期化の原因はテロだけではなく、もちろんコロナ禍の影響もある。そのため「パンデミックとヨーロッパ政治」という視点で、この交渉過程の長期化要因の検討を進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの蔓延のためベルギーにインタビューに行くことがかなわなかった。テロの背景についての根拠を得ることができず、それ以外の関連する実績はいくつか予定どおり出すことができたが、テロの背景について当初予定していた業績(論文)を出すことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの状況、ワクチンの状況次第だが、今期も海外渡航が難しく、再延長も難しいとなれば、先行研究の精査と、可能な範囲でのオンラインインタビューで実績を積み上げる。 単著化の話もある(ヘウレーカ)が、ベルギーに調査に行けなければ、出版の内容を変更して執筆を進めることになる。
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Causes of Carryover |
理由:コロナ禍のため、ベルギーでの現地調査(約10日程度)ができなかったため。 計画:海外渡航が可能な状況になれば、アポイントを取って短期間でもインタビューに出る(国外旅費 60万)。特に夏までに見込みが立たないような場合、東京出張が可能であれば、国立国会図書館(東京)にのみ所蔵してあるベルギーの現地新聞から情報を集める。従来の予備的な国内調査よりも時間をかける必要があるので、その滞在費を見込む(国内旅費 20万)。 また、同様に海外渡航が不可能な場合、回想録などの一次資料の取り寄せが不可欠になる(備品 20万)。さらに現地での有識者および(当時の)閣僚、官僚等にオンラインによるインタビューが可能になれば、もう少し高性能なオンライン対応PCが必要になる(現状のものは、オンライン授業対応でかなり酷使しメモリーも消耗している)かもしれない(備品 20万)。 さらに、一年遅らせた分の先行研究(書籍)購入費はいずれにせよ不可欠(備品 金額未定)。
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Research Products
(5 results)