2018 Fiscal Year Research-status Report
ウクライナ政治体制の解明―求心的多頭競合体制の成立と変容
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18K01444
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大串 敦 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (20431348)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウクライナ / 政党 / エリート / ロシア |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は次年度以降の足場固めの意味も込めて、フィールドワークよりもこれまでの知見をまとめ、公刊することに力点を置いた。 2018年度での、本研究課題に直接関連した研究成果は、ウクライナの東部エリートに大きな影響力を持つかに見えた政党野党ブロックの興亡を分析した論文である。これは党中央指導部のエリートへのインタヴュー調査のみならず、野党ブロックにとって枢要なハルキウとドニプロペトロウシクという二つのリージョンでの現地調査を踏まえたものであり、野党ブロックの抱えていた脆弱性を明らかにした。本論文は世界的な査読誌Europe-Asia Studiesに掲載が受諾された(2018年12月受諾、2019年度内刊行予定)。 また、ウクライナの対象事例であるロシアに関しては2018年3月に行われた大統領選挙を分析した論文を公刊した。これは選挙時に行った現地調査とその後の文献・資料調査を踏まえたものである。かつて強力だった地方知事の集票力・動員力が陰りを見せる中で、プーチン大統領が、統一ロシアのような、これまでプーチンを支持することが存在理由であった政党からも距離を置き、その他の既存政党の枠をも超えた「全人民の指導者」となってきていると考察した。ここから近年の統一ロシアの苦境も説明できると考えられる。政党政治の流動化はウクライナではロシアより一層激しくみられるものであり、ウクライナの動向を考察する意味でもロシアの動向を観察する意味は高かったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際的査読に掲載受諾を得たほか、比較する意味でロシアを考察できた点は重要であった。2019年度以降の研究の進捗のための足場固めはできたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ウクライナでは、2019年3-4月に大統領選挙が行われ、無名のゼレンシキー候補が当選を決めそうである。また、同年中には議会選挙も予定されている。新大統領に全く政治経験がないので、今後占うのは困難であるが、これまでポロシェンコ大統領の下に参画していたエリートの流動化が始まると予想される。そこで、2019年中に複数のリージョンでフィールド調査を行い、大統領選挙後のエリートの再編成を分析する。 その予備的な作業は2019年6月に行われるスラヴ・ユーラシア研究東アジア学会で報告する予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度はフィールドワークをすることができなかったため、一部計画に食い違いが生じた。2019年度は大統領選挙と議会選挙を見据えたフィールドワークを行う予定であり、その支出が大きな部分を占めると考えられる。
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Research Products
(2 results)