2020 Fiscal Year Research-status Report
ウクライナ政治体制の解明―求心的多頭競合体制の成立と変容
Project/Area Number |
18K01444
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大串 敦 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (20431348)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウクライナ / ロシア / エリート / 政党 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究実績は、英語論文が1本、雑誌論文が2本になる。英語論文は、しばらく前に採択された後、2020年にようやく本誌に掲載されたものである。ウクライナの政党野党ブロックを分析し、恩顧主義的な政党が行政的資源を失ったのち、弱体化していく様相をウクライナの地方政治の動向を踏まえて論じたものである。採択から掲載までの時間が長かったことから若干古びてしまった感は否めないが、国際的なジャーナルの掲載であり、今後の反響が期待できる。 日本の雑誌論文は本研究課題ではウクライナと対照する事例となるロシアの政治体制、とりわけプーチン体制を論じたものである。一般向けの論考であるので、鳥瞰的な観点からプーチン体制の長期化と個人支配化を論じ、その脆弱性について考察した。プーチンは就任から長らく諸エリート集団のバランサーとして動いてきたが、徐々に上層エリートがプーチン個人に大きく依存する体制を作り上げた。国際関係においても、西側との対立の中でプーチンのみがロシアの国益を守ることができる指導者であると、国民に信じさせることに成功してきた。こうしてプーチン個人に内外政とも依存する体制は、プーチン後の体制を構想することを困難にしてしまった。また、プーチン人気は若干低下傾向にあるものの、代替する支配の構想は今のところ反対派も示せていない。こうして代替物がないことがプーチンの長期支配を成り立たせていると論じた。 全体的な進捗について付言すると、周知のとおり、コロナ禍で現地調査が事実上不可能になったので、研究の進展はやや遅れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
周知の通りコロナ禍により、現地調査が事実上不可能になった。本研究課題は現地調査による質的な研究に基づいて、ウクライナ政治体制の概念化を試みるものであるが、肝心の現地調査ができないことは大きな支障になっている(現行の感染状況ではやむを得ないことであるが)。また研究報告をする予定であった、中東欧研究国際評議会(ICCEES)の大会もコロナ禍で2021年に延期となった。諸外国への研究の発信と先端研究の受信の両面でも支障が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
現状の感染状況から見て、2021年度の現地調査もかなり厳しい状況であろうと予想される。文献調査など、現地に行かなくてもできる研究は続けることになる。そのほかの手法として、ウクライナの与党公僕党内部の亀裂が目立つようになっているので、経済権力がどのように政党に浸透したのかを、いくつかの具体的な政策過程を微視的に検討することで解明できないかと考えている。それによってウクライナにおける経済権力と政治権力の関係を概念化したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた現地調査が不可能になり、多くはその分が未執行になっている。2021年度に現地調査が可能な状況になれば執行するが、現行の状況が続く場合、予定より多くの文献資料の購入に充てる(文献資料自体は大量にあっても無駄にはならない)ことや、英語での発信量を増やすことで英文校閲などに充てて利用する。
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Remarks |
2020年9月10日に東京財団で遠隔開催されたポピュリズム国際歴史比較研究会の第五回会合で報告した内容の一部を文章化したもの。
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Research Products
(4 results)