2018 Fiscal Year Research-status Report
「新自由主義」的教育改革の日米比較ー資本主義の多様性論の批判的検討ー
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18K01445
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
坂部 真理 大東文化大学, 法学部, 教授 (30513668)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アメリカ教育改革 / 新自由主義/新保守主義 / どの子どもも落ちこぼれにしない法 / 経営者団体 / 企業による教育改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、教育改革に関するアメリカの経営者団体の選好・戦略を明らかにするという目的の下、2001-2002年の連邦議会における「どの子どもも落ちこぼれにしない法(NCLB法)」の制定過程を分析し、(1)全米商工会議所、ビジネスラウンドテーブル、経済成長委員会など同国の主要な経営者団体が近年、相互に広範に連携し、連邦政府による教育関与および財政支援の拡大を求めて積極的に圧力を行使してきたこと、(2)経営者団体によるこうした運動は、共和党保守派や宗教・社会的保守派など他の保守系集団との間に先鋭な路線対立を生み出してきたことを明らかにした。以上の成果を一本の研究論文として刊行した。 次に、こうした経営者団体の選好・戦略の歴史的起源を解明するため、より時代を遡り、20世紀初頭以降の経営者団体による教育改革運動とその後の変化についても分析した。この中では、1910年代は、アメリカの主要な経営者団体は「職業教育」を重視し、普通教育への連邦関与・財政支援については厳格に反対する傾向が強かったが、その後、1980年代半ば頃を境として、彼らが「普通教育」重視、およびそれへの連邦関与・財政支援を容認、ないし積極的に要求する方向へと大きく転換してきたことを明らかにした。本研究では、経営者団体が刊行した報告書、連邦議会公聴会で行った証言などの資料を分析し、上記のような1980年代の経営者団体の選好変化が、ポスト工業社会におけるアメリカの労働力需要および供給、両面での変化に対する経営者らの認知と関連して生じたことを明らかにした。以上の成果については学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較分析のうち、アメリカの事例研究については当初の予定通り資料収集・論文執筆を行えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、1980-1990年代の時期の資料を中心にアメリカでの資料・文献収集を継続し、教育改革に対する主要な経営者団体の選好形成・変容のプロセスをより詳細に分析する。
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Causes of Carryover |
2018年度に予定していたアメリカでの資料収集が実施できず、翌年度以降に延期となったため。
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