2018 Fiscal Year Research-status Report
Thailand: Changing Political Roles of the King and Destabilization of the National Polity
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18K01447
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
浅見 靖仁 法政大学, 法学部, 教授 (60251500)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タイ / 国王 / 王政 / 国体 / ワチラロンコーン / ナショナリズム / 民主主義 / 軍 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、5月17-23日、6月21-30日、8月30日-9月4日、9月9-13日、3月21日-4月2日の5回計41日間、タイで現地調査を行った。2018年度は約8年ぶりの総選挙が行われ、その際に国王の実姉が首相候補に名乗りをあげるという前代未聞のでき事があるなど、国王や王族の政治的動きが活発化したため、当初は、3回の調査で計30日間タイで現地調査を行う予定であったが、次年度以降の予算を前倒しして使用し、現地調査の回数と期間を増やすことにした。 タイでの現地調査では、バンコクで王室関係者や政治家、軍人を対象に聞き取り調査を行うとともに、タイ人有識者とも情報や意見の交換を行った。また長年フィールドワークを行っているターク県で一般住民を対象にして、国王や国体についての考え方についての聞き取り調査も行った。 政治的な混乱が続くタイにおいて、2016年10月に即位したワチラロンコーン国王が、どのような政治的役割を果たすかについては、一般の人たちの関心も高く、研究成果の一部は、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞などに解説記事を掲載したり、タイの英字紙Nationやイギリスの国営放送BBCのタイ語放送でもコメントを述べることで、一般社会にも還元できた。 日本タイ学会が7月に開催した研究大会では、3人のタイ人研究者を招聘して"Reforming Thai politics for equality and justice"と題するパネル・ディスカッションを開設し、本研究の調査結果も踏まえてコメントを行った。11月に開催されたアジア政経学会の秋季研究大会で、"Do Democracies Decline in Asia?"と題する英語の共通論題のパネルの司会兼コメンテーターを務めた際にも、本研究の成果を活かすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タイでは国王に対して批判的な発言をすると不敬罪の対象とされることがあり、国王の政治的役割について調査を行うことにはさまざまな困難がともなう。王室関係者や政治家、軍人、一般の人々などを対象に聞き取り調査を行う際にも、調査相手との間に信頼関係がないとなかなか彼らが本当に抱いている考えを聞き出すことはできない。 本研究でも、そうした課題を完全に克服できたわけではないが、長年タイ研究をしている中で、各界のキーパーソンやフィールド調査地の一般住民と信頼関係を築いてきたため、これまで明らかにされてこなかった内部情報を収集したり、地方都市や農村部在住の人たちの意識について聞き取ったりすることができた。 2018年は、国王の政治的役割に大きな変化が生じた年であったため、情報収集に時間の多くを使ったが、タイ以外の国々における君主制と民主主義の関係に関するすぐれた研究をいくつか読み進めることができ、理論的な枠組みの構築の面においても一定の成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ワチラロンコーン国王の政治的な役割についての情報の収集を継続するとともに、収集した情報を学術的に分析し、その成果を発表することにも力を入れていくことにしたい。タイの近隣国であるマレーシアやカンボジアでも国王の政治的役割に変化が見られるので、タイの事例と他国の事例についての比較にも力を入れたい。
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Research Products
(2 results)