2019 Fiscal Year Research-status Report
Time Bank governance in community comprehensive care in super aged society
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18K01450
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福田 耕治 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (20165286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 八寿絵 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60625119)
引馬 知子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 教授 (00267311)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地域包括ケア / 時間銀行 / EU(欧州連合) / ボランティア活動 / 超高齢社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢社会の地域包括ケア・システムに時間銀行制度を組み込む先見的ガバナンスの在り方について欧州諸国の先行事例と日本の類似制度を検討し、わが国への示唆を得ることを目的とする。研究実施計画に従って、2019年度は、イノベーションと経済成長・雇用・社会保障制度の在り方と日本で地域包括ケアにおける時間銀行と類似の取り組みについて現地調査を行った。さらに先見的ガバナンスや時間銀行に関する欧州諸国の先進事例の調査報告書等を基に論点整理を行い、その実態と日本の制度との比較に基づいて検討する観点から、収集できたデータの分析を行い、分担研究者:福田八寿絵(鈴鹿医療科学大学薬学部教授)と協議を重ねて、暫定的な研究成果をまとめた。その研究成果の一部は、11月25日経団連21世紀政策研究所において「EU政治経済統合のガバナンスとEU改革の将来像」というテーマで報告を行い、欧州委員会のフォンデア・ライエン新委員長の優先課題との関連で、EU雇用・社会政策と欧州諸国・EUの時間銀行の取り組みについて報告を行った。さらに、2019年12月8日(日)日本生命倫理学会において「超高齢社会の地域包括ケアにおけるAI(人工知能)をめぐる法的社会的倫理的課題-人間中心の多機関・多職種連携のガバナンス」(於:東北大学川内キャンパス )という論題で共同発表を行い、議論を深めた。研究論文や図書としては、「EU統合過程におけるグローバリズムと反グローバリズム」吉野孝編『グローバリズムと反グローバリズム(仮題)』(信山社、近刊)坂井一成他編『よくわかるEU政治』(ミネルヴァ書房、2020)及び福田耕治・坂根徹『国際行政の新展開』(法律文化社、2020近刊)などが挙げられる。新型コロナウイルスの影響のため、これらの印刷物の刊行が遅れている状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「働き方改革」以前に、現実の日本の超高齢社会は大きく変化してきている。すなわち減額傾向にある受給年金額では生活が困難な高齢者が増え、65歳以上で病気がちでも働かざるを得ない貧困高齢者も少なくない。高齢者の就業率の向上と、科学技術イノベーション、ICTやAI(人工知能)/ロボット導入とその活用に伴う生産性向上が、高齢社会にイノベーションを引き起こし、社会制度に大きな変化を及ぼすことが予想される。少子化に伴う生産年齢人口の減少と相俟って、安易な移民労働力に依存する前に政策的に対応すべき行政課題は少なくない。高齢者の雇用率、労働力率を維持できるよう労働環境の改善が要請される。 第3次産業が中心となった現代情報社会に見合う働き方が可能となる条件整備と雇用政策刷新の必要性が高まっている。過去2年間の本研究計画の進捗状況は、ほぼ順調であっ多と評価できる。しかし、新型コロナウイルス拡大による社会の在り方の変化、働き方を含め、政府の提唱する新しい生活様式への転換に伴い、インターネットが普及したネットワーク社会では、①いつでも、どこでも、だれでもアクセスできる情報空間があり、②個人対個人、個人対多数の支援者との間での情報交換が可能であり、③大量のニーズ情報の発信と受信が可能な双方向でインタラクティブな媒介手段であり、④公共空間を利用して個人の主体性とボランティア活動による社会連帯を通じて高齢者介護の人的資源を供給でき、社会的包摂が実現できる。情報空間がネットワーク化した現代社会において、本研究の目的のひとつでもある時間銀行制度の社会実装化は、高齢者・障碍者のニーズとボランティア活動支援者を結びつけ、相互に有効な結節点となり得る。政策プロセスと先見性を組み合わせたガバナンス・システム全体を設計することが可能となるに違いない。以上のように、本研究は、おおむね順調に推移していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
しかし、2020年3月に予定していた欧州における現地調査が、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、欧州諸国がロックダウンを実施し、入国拒否状態になったため、ベルギー・ブリュッセルのEU本部を訪問し、欧州委員会の関係行政機関の高齢者ケアを所管する国際公務員に対する現地インタビュー調査実施計画が実施できなくなった。これへの対処が次年度、2021年(最終年度)の課題となる。、欧州委員会の関係行政機関の高齢者ケアを所管する国際公務員に対する現地インタビュー調査ができなきくなった。そこで、2020年度は、Zoomによるミーティング機能を活用して欧州諸国の有識者、研究者、欧州委員会職員とインタビューや意見聴取を行い、また日本国内の高齢者の介護ニーズについてはインターネット調査を中心に研究計画を一部修正し、本研究の目的の達成に努力したい。共同研究者間の連絡と研究打ち合わせ、研究発表にもZoomやWeb-EXなどの最新のコミュニケーションのツールを駆使することで、今後の研究推進の方策とする。研究分担者に一人が、新型コロナウイルス拡大の影響から、実施予定であった高齢者のインタビューを次年度に延期した。なお、英語論文、著書の出版も含め、すでに原稿提出済みの論稿も何点かあるが、新型コロナウイルスの影響のため、これらの印刷物の刊行が遅れている状況にある。
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Causes of Carryover |
2020年2月27~28日開催の「地域包括ケア・シンポジューム」に参加するため大阪出張を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により、出張を中止した。これに伴い、出張のための新幹線等の旅費と宿泊費分が次年度に繰り越さざるを得なかった。次年度において、同シンポジュームが実施される際に本費用を出張費に充当する。
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