2022 Fiscal Year Research-status Report
「クーデタ後」の政軍関係の比較政治史的研究-イベリア両国を事例として-
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18K01456
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
武藤 祥 関西学院大学, 法学部, 教授 (40508363)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 権威主義体制 / イベリア半島政治史 / 政軍関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、新型コロナウィルスの感染状況が緩和してきたため、スペイン・ポルトガルでの史料調査を本格的に再開することができた(2022年9月と2023年3月)。本研究課題にかかる内容としては、ポルトガルのシドニオ・パイス独裁(1918-1919年)、およびスペインのプリモ・デ・リベーラ独裁(1923-1930年)に関する史料調査・収集を行った。両独裁とも軍事クーデタを契機として成立した独裁でありながら、シドニオ・パイスもプリモ・デ・リベーラも、クーデタ後は単なる軍事独裁ではなく、新たなタイプの長期独裁の構築を目指したという点で、本研究が主として扱うポルトガル・新国家体制とスペインのフランコ独裁との比較は新たな視座を提供してくれると思われる。 ただし、以前も実施した軍関係の史料館の調査においては、独裁体制下の政軍関係を直接解明するような史料がなかなか発見できなかった。次善の策として、シドニオ・パイスやプリモ・デ・リベーラの統治に関するさまざまな史料を渉猟することで、この点を補うことに務めた。 また、研究期間の最終年度となる2023年度に、何らかの研究成果を公刊すべく、準備に着手した。具体的には、2021年度の日本比較政治学会で、民主化期におけるスペインとポルトガルの政軍関係について行った報告を発展させ、独裁体制期まで包含した形で政軍関係を分析する論文にまとめるべく、政軍関係の理論的著作や、両国の政軍関係を扱った文献を渉猟した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の通り、研究期間全体を通じて、新型コロナウィルスの感染拡大によって、申請時の予定通りに史料調査を実施できていないことが大きな要因である。また、特にスペインにおいて、軍関係の史料は、地方都市を含めた複数の史料館に分散しているため、短期滞在ではなかなか調査を行えないという困難もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は研究期間最終年度となるため、論文を執筆・公刊することを目指す。すでにベースとなる論文は2021年度の学会報告論文として執筆しているが、当時は新型コロナウィルスの感染状況が深刻で、一次史料はもちろん、二次文献の渉猟も満足に行える状況ではなかった。そのため、2023年度はこれまで収集した史料や文献によって当該論文の補強を行い、併せて独裁体制期も含めた、イベリア両国の政軍関係を分析するための、より包括的な分析枠組の構築と、それを用いた政治史的分析を行うことを目指す。
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Causes of Carryover |
研究代表者が勤務する大学から受けた研究助成金は、翌年度への繰り越しができないため、そちらを優先して使用した結果、本研究費の使用額が当初の予定より減少した。 来年度は、海外での史料調査などの回数・1回あたりの滞在日数を増やすことで、予定通りの支出が行えるように努める。
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