2019 Fiscal Year Research-status Report
国連安全保障理事会に対するアカウンタビリティ・メカニズムの解明
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18K01465
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蓮生 郁代 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (80509597)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国連安全保障理事会 / 国際連合 / アカウンタビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバルガバナンスの重要な論点であるにもかかわらず、学術的な取り組みが困難であるとされてきた安全保障分野のグローバル・ガバナンスにおける「アカウンタビリティ」の向上の問題に焦点を当てるものである。事例研究として、国連による「国際の平和と安全の維持」の要たる国連安全保障理事会(以下、安保理)を分析対象として取り上げ、「どのようにして安保理による権力濫用を阻止し、安保理のアカウンタビリティを向上させることができるか」を実証的に探究することを目的とする。
研究期間は5年間に設定しており、最初の3年間(平成30年度から令和2年度)は、安保理に対し作用しうる多様なアカウンタビリティのメカニズムの解明を行う。この期間においてはとくに、安保理に関するアカウンタビリティの社会的関係の解明ーすなわち、誰がどのようにして安保理に対しアカウンタビリティを要求しうるかーを中心課題として探究する。研究方法は実証分析であり、国内外での文献調査や現地でのヒアリング調査を行う。その際、次の2つのカテゴリーの活動に焦点を当てる。第1のカテゴリーは加盟国によるイニシアティブであり、第2のカテゴリーは市民社会アクターによるイニシアティブである。研究初年度の昨年度(平成30年度)と本年度(令和元年度)においては、第1のカテゴリーの調査に取り組んだ。主に着目したアクターは、2015年の国連創立70周年において拒否権行使の制限や安保理の作業方法の改善などに取り組んだACT(Accountability, Coherence, Transparency)や、強力な(robust)平和維持活動の設置の増加に伴い、質量ともに負荷が増している要員派遣国である。昨年度は前者のACTの活動に着目したが、本年度においては後者の要員派遣国のイニシアティブに焦点を当て文献調査及び分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては、文献調査の他に、世界国際関係学会(ISA)の年次研究大会の時期(2020年3月にハワイで開催予定だった)に合わせ渡米し、ニューヨークでヒアリング調査を含む現地調査を実施することを予定していた。主な調査対象は、国連加盟国からなるACTグループ(Accountability, Coherence, Transparency)や、強力な平和維持活動の設置の増加に伴い負荷が増している要員派遣国などの国連政府代表部を想定していた。しかし、ニューヨークでのCovid-19の感染拡大に伴い、米国への渡航が困難になり、かつとくに対面でのインタビュー調査実施が難しくなったため、その部分においては研究課題の進捗に遅れがみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
5年間の研究期間のうち、前半の3年間に関しては、「安保理に関するアカウンタビリティの社会的関係の解明」がテーマであり、そのためには、主に2つのカテゴリーの活動―加盟国と市民社会アクターによる活動ーに焦点を当てるとされていた。まず、前半3年間のうちの最初の2年間においては、第1のカテゴリーである「加盟国によるイニシアティブ」の調査・分析が主だったが、本年度予定していたACTや要員派遣国などに対する現地調査が、ニューヨークでのCovid-19の感染拡大のため実施できなかったため、その分は次年度以降に行いたいと考えている。
次に、研究開始から3年目となる次年度は、第2のカテゴリーである「市民社会アクターによるイニシアティブ」の解明に焦点を当てるつもりである。従来、人権分野のNGOや紛争地で活動する国際NGOなどが、アリア・フォーミュラ・ブリーフィング等を通じて安保理に影響を与えていることが知られてきた。しかし、近年にいたっては、同形態が徐々に形骸化されてきたと言われる中、現在、それに代替するどのようなプラットフォームが考案され、安保理に対し影響をもたらしているかを主にヒアリングを通じて明らかにしたい。さらに、市民社会アクターによる安保理の透明性を向上させるための活動にも着目し、安保理に関する情報公開活動に従事するNGO(Security Council Report)などにもヒアリングを通じて調査を行いたい。
ただし、今後、Covid-19の感染拡大が継続し、ニューヨークでの現地調査が引き続き困難を極める場合には、メールやスカイプなどを利用した遠隔調査も代替方法として用いることを検討したい。
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Causes of Carryover |
2020年3月に世界国際関係学会(ISA)の年次研究大会(ハワイのホノルルにて開催予定だった)にあわせて渡米し、①ISAの国際機構セクションへの参加と、②ニューヨークの国連事務局訪問と、③ACTや要員派遣国などに対するニューヨークでの現地ヒアリング調査を予定していた。しかし、学会の研究大会自体が開催中止となり、学会参加が不可能になったこと、かつニューヨークにおけるCovid-19の感染拡大により現地での対面調査の実施も不可能となったため、使用額に差額が生じた。
これらの本年度中止せざるを得なかった現地でのインタビュー調査に関しては、ニューヨークにおけるCovid-19の感染収束状況などを考慮に入れながら、次年度以降に行う計画である。また、ISAやグローバル・レベルの国連システム学術評議会(ACUNS)などの海外の学会の年次研究大会への参加に関しても、各学会開催地でのCovid-19の感染収束状況などを考慮に入れながら、次年度以降に行う予定である。
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