2019 Fiscal Year Research-status Report
ノーベル文学賞と日本 1958-1968年―日本人候補選考をめぐる政治力学
Project/Area Number |
18K01471
|
Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
吉武 信彦 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (80240266)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ノーベル文学賞 / スウェーデン・アカデミー / 谷崎潤一郎 / 西脇順三郎 / 三島由紀夫 / 川端康成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度に引き続き、1968年の川端康成のノーベル文学賞受賞に至るまでの日本人候補をめぐる選考状況について、調査を進めた。1958年以降の10年間に焦点を当てている。 2018年度においては、対象期間の日本人候補4名(谷崎潤一郎、西脇順三郎、川端康成、三島由紀夫)の著作がいかに外国語に翻訳されていたかを明らかにするとともに、スウェーデン・アカデミー(ノーベル文学賞の選考機関)において開示された選考史料の収集に努めた。選考史料は、50年間の非公開期間の後、開示されるのであるが、限られた閲覧時間での書き写し作業となり、入手に苦労した。 2019年度は、実際に入手したスウェーデン・アカデミー選考史料の読み込みを集中的に行なった。その手始めに、1958年に初めて候補となり、1965年の死去まで有力候補とされていた谷崎潤一郎について、集中的に調査した。その際、推薦状やスウェーデン・アカデミーによる報告書などのスウェーデン側史料のみならず、谷崎自身の日記や作品、日本外務省の開示史料などとも突き合わせ、双方の側から選考の推移を分析した。その結果、日本側の期待ほどには、スウェーデン・アカデミーが谷崎を評価していなかった事実が浮かび上がった。 この調査結果は、以下で発表した。拙稿「ノーベル賞の国際政治学-ノーベル文学賞と日本、谷崎潤一郎をめぐる推薦と選考 1958~1965年」『地域政策研究』(高崎経済大学)第22巻第4号、2020年3月、29~50頁。 2020年3月に予定していた2回目のスウェーデン・アカデミー訪問は、新型コロナウィルスの感染拡大で、出発直前になってキャンセルせざるを得なかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に入手したスウェーデン・アカデミーの史料の読み込みを進め、上記の通り、まず谷崎潤一郎については、ノーベル文学賞候補としての評価を分析し終えた。その結果は、論文の形ですでに発表した。 現在は、残る西脇順三郎、三島由紀夫、川端康成の3名についての評価を調査中である。 なお、2020年3月に予定したスウェーデン・アカデミー調査が中止になったのは極めて残念なことであった。上記の谷崎らの調査中に、追加で入手、確認が必要な史料が多数判明し、スウェーデンでさらに調査する必要があったからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、手元にあるスウェーデン・アカデミー史料などを基礎にして、西脇順三郎、三島由紀夫、川端康成の3候補の評価について調査を進めたい。最終年度となるため、調査と並行して論文の形にしていきたいと考えている。 また、新型コロナウィルス問題が落ち着き、海外出張ができるようになれば、再度スウェーデン・アカデミーなどを訪問し、追加の情報収集活動を行ないたい。特に、対象期間のスウェーデン・アカデミー内のノーベル委員会の活動について調べたいことが多い。また、対象期間から直接ははずれるが、史料開示されたばかりの1969年の選考史料についても調査し、1968年を考える際の比較の材料としたい。
|
Causes of Carryover |
2020年3月に予定したヨーロッパ出張は、新型コロナウィルスの感染拡大で直前に中止せざるを得なかった。そのため、航空券、宿泊費などでキャンセル代が生じた。残る分については、翌年度に繰り越した。 新型コロナウィルス問題の今後の状況次第ではあるが、ぜひ2020年度内にヨーロッパ出張をしたいと考えている。
|