2021 Fiscal Year Research-status Report
ノーベル文学賞と日本 1958-1968年―日本人候補選考をめぐる政治力学
Project/Area Number |
18K01471
|
Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
吉武 信彦 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (80240266)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ノーベル文学賞 / 西脇順三郎 / スウェーデン・アカデミー / ドナルド・キーン |
Outline of Annual Research Achievements |
1950年代から60年代にかけてノーベル文学賞候補になった日本人に関して、その推薦、選考の状況を一次資料に基づいて分析を行ってきた。 しかし、本年度も、コロナ禍により日本、スウェーデン、ノルウェーなどの出入国が厳しく制限され、またコロナ感染の恐れも強かったため、現地での調査は実施できなかった。そのため、本研究の期間を2022年度まで再延長した。研究を終えるまでに現地に赴き、情報の収集、確認を行いたいと考えている。
2021年度の研究としては、以下の論文を執筆した。これは、1950年代以降、川端康成、谷崎潤一郎、三島由紀夫とともにノーベル文学賞候補に推薦されていた西脇順三郎に焦点を当て、その推薦状況、さらに選考母体のスウェーデン・アカデミーの見解を整理したものである。2020年度に論文にまとめた谷崎潤一郎と比較すると、西脇の評価は低いものであった。その際、翻訳の少なさ、欧米文学の影響などが評価を下げる要因となった。スウェーデン・アカデミーが考えていた初の日本人受賞者の理想像を鮮明にできた点から、西脇に注目した意味は大きかったと思われる。また、西脇とノーベル文学賞の関係に関して、日本では極めて断片的な情報しかなく、実態が不明であった。その点に関して、今回の論文は現地の史料に裏打ちされた分析、評価を提示できた。 吉武信彦「ノーベル賞の国際政治学-ノーベル文学賞と日本、西脇順三郎をめぐる推薦と選考 1958~1968年-」『地域政策研究』(高崎経済大学)第24巻第4号、2022年、1~23頁。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、予定していた現地調査がここ2年間、実施できていない。そのため、欲しい資料が完全には入手できておらず、また詰めの確認もできていない状況にある。
現在は、2018年度、2019年度にスウェーデン、ノルウェー、イギリスにおいて実施した現地調査の際に入手した資料を最大限活かし、日本側の資料も駆使して研究をまとめている状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、以下の3点を考えている。
(1)まずは、今日本でできることを着実に行いたい。これまでの現地調査ですでに入手した資料と日本側の資料を照らし合わせ、特に三島由紀夫、川端康成の推薦と選考に関して分析を継続したい。 (2)そのうえで、できれば研究完了までに現地調査を実施したいと考えている。新たな資料がないかを確認し、さらにこれまでの分析で生じた疑問点、不明点などを埋める追加調査を行う予定である。 (3)これまでの作業を通じて、最終的にこれまでの研究を振り返り、本課題全体のまとめを行いたい。
|
Causes of Carryover |
スウェーデン、ノルウェーなどでの現地調査を予定していたが、コロナ禍のため、実施することができなかった。研究のための図書、文具などを購入したが、旅費に予定していた分は結局、余ってしまい、次年度に繰り越すことになった。 次年度は、可能であれば、現地調査を実施したいと考えている。
|