2022 Fiscal Year Annual Research Report
A study of New Cold War - Its Reasons, Process, Structure and Global Politics
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18K01472
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
六鹿 茂夫 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 国際関係学研究科附属広域ヨーロッパ研究センター客員研究員 (10248817)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 欧米とロシアの新冷戦 / ウクライナ戦争 / ハイブリッド戦争 / 黒海地域 / トルコ / モルドヴァ / 17+1 / 米中新冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はウクライナ戦争を黒海地域の視点から分析した。黒海をロシアとトルコの閉ざされた海にしてきたトルコであるが、ロシアが現状打破国家に転向したことで、伝家の宝刀であるモントルー条約を援用して、黒海地域の勢力再均衡に向かった。また、ロシアのハイブリッド戦争を受けたモルドヴァは、EUをはじめとする欧米志向をいっそう強め、ロシアの影響力低下によってアルメニアは多角外交へと舵を切った。 本研究は3つの課題について明らかにした。 1)ロシアのウクライナ戦争の原因について、国際秩序に不満を抱く不飽和国家が、それを打破できると認識するまでに国力を回復した時、強いリーダーシップ、帝国など大国としての歴史的記憶、不安定な国際秩序などの諸条件が揃えば、現存国際秩序を力づくで打破しにかかるであろうとの結論を得た。 2)旧冷戦と新冷戦の比較については、核の脅威、グローバルな覇権競争、軍事対立など共通点が見られる一方で、二極構造と多極構造、資本主義と共産主義のイデオロギー対立とリベラル民主主義と権威主義という体制間・価値の対立、核の脅威から経済・技術面での競争(デカプリング、デジタル覇権、連結性の地政学化)への重点の移行など、相違点が確認された。 3)欧米とロシアの新冷戦とグローバルな国際政治との関連性については、米中新冷戦が加わって複雑な外交が展開された。例えば、欧米国際社会による対露制裁の強化はロシアの中国依存を深化させ、対露制裁の緩和とウクライナ支援の停止を説く論調が西側に現れた。ところが、ウクライナの敗戦は米国の力の衰退を意味するため、中国の台湾武力統一を鼓舞しかねない。そこで、米国はウクライナ支援を本格化させつつ、中国の対露軍事支援を牽制し続けた。他方、米中対立と関連して深化する中露関係は、ロシアを仮想敵国とみるバルト諸国やポーランドの中国離れを惹起し、「17+1」を弱体化させた。
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Research Products
(5 results)