2020 Fiscal Year Research-status Report
アジアにおけるイギリスの広報政策 ―外務省情報調査局の活動を中心に―
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18K01473
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
奥田 泰広 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (10610545)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アジア国際秩序 / イギリス外交 / 広報政策 / 日英関係 / 情報調査局 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、冷戦初期にイギリスがアジアにおいてどのような政治的広報政策を展開していたかを明らかにすることを目的としている。第二次世界大戦のイギリスは、経済力・軍事力の低下を原因として国際外交の場において影響力を減退させたため、外交政策を補完するための政治的広報政策を重視するようになった。本研究は、その政治的広報政策にあたって中心的な役割を果たした外務省情報調査局(Information Research Department:以下IRD)のアジアにおける活動を調査する初の研究である。このようにIRDの活動を明らかにすることは、イギリスの対アジア政策全般を見直す契機となり、アジア国際秩序においてイギリスが果たした役割を再検討することにつながる。本研究は、一次資料と二次資料を併用し、それらを考察することによって研究を進める。一次資料はおもにロンドン(英国)にある英国国立公文書館で収集し、二次資料はこの分野の研究書を利用する。 「研究実施計画」では「研究成果の発表は研究論文の公表とするが、機会があれば学会報告の形でも実施する」としていた。研究計画を開始して2年間はこの計画通りに実行しており、平成30年度は研究論文1点、平成31(令和元)年度は研究論文2点を公表した。平成31(令和元)年度にはまた、情報史研究会での研究報告を行う機会も得た。ただ、平成32(令和2)年度は新型コロナ感染症の感染拡大により教育活動の比重を高めざるをえず、研究成果の公表は研究論文1点に限定された。それは、アジア国際秩序に関する別の共同研究の一部として公表されたものである。奥田泰広「大英帝国のアジア撤退戦略と民主主義 独立国家インドの誕生」中西輝政編著『アジアをめぐる大国興亡史1902-1972』(PHP研究所、2020年)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実施計画」からやや遅れている。同計画では平成30年度及び平成31(令和元)年度の計画のいずれにおいても、一次資料の収集のためにロンドン(英国)に2週間滞在するものとし、助成金のうち485000円を交通費・宿泊費・日当にあてるものとしていた。また、毎年度出版される新たな研究書の入手のため に15000円の支出を予定していた。これらの計画については、支出額について誤差的な相違はあるものの、順調に実施していた。しかし、その後に新型コロナ感染症の感染状況が悪化し、平成32(令和2)年度は現地での研究活動が実施できず、研究を1年間延長することを余儀なくされた。令和3年度は現地の感染状況は改善されたものの、日本ではまだ新型コロナワクチンをいつ接種できるか予測できず、研究実施計画を大幅に変更しないといけない可能性が生じている。 主な研究成果は以下の通り。[平成30年度]奥田泰広「外務省情報調査局のインドにおける活動 イギリスの対南アジア広報政策(1948-1956 年)」『愛知県立大学大学院国際文化研究科論 集』第20号(2019年)71-91。[平成31(令和元)年度]奥田泰広「占領期日本と英連邦軍 イギリス部隊の撤退政策を中心に」『愛知県立大学 外国語学部紀要』第52号地域研究・国際学編(2020年)1-20、奥田泰広「占領期日本におけるイギリスの広報政策 外務省情報政策局の活動(1947年)」『愛知 県立大学大学院国際文化研究科論集』第21号(2020年)107-126。[平成32(令和2)年度]奥田泰広「大英帝国のアジア撤退戦略と民主主義 独立国家インドの誕生」中西輝政編著『アジアをめぐる大国興亡史1902-1972』(PHP研究所、2020年)
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Strategy for Future Research Activity |
最初の2年間は「研究実施計画」通りに実行できていたが、その後に新型コロナ感染症の感染状況が悪化した結果、平成32(令和2)年度は現地での研究活動が実施できず、研究を1年間延長することを余儀なくされた。令和3年度は現地の感染状況は改善されたものの、日本ではまだ新型コロナワクチンをいつ接種できるか予測できず、研究実施計画を大幅に変更しないといけない可能性が生じている。「研究実施計画」では令和3年度は次のような研究を実施する予定であった。「ロンドンにおいて2週間の一次資料収集を実施し、助成金のうち485000円を使用する。前年度に複数の省庁について資料収集を行うが、それは 膨大なものであることが分かっており、単年度で収集できるとは思われない。また、英国では文書館における資料公開がきわめて盛んに実施されており、現段階 では予測できない文書公開がなされている可能性もある。そのことも視野に入れて、できる限り多くの資料を収集する。前年度と同様にデジタルカメラを使用す る。また、前年度と同様に新たな出版物の入手に15000円を使用する。研究成果の発表は研究論文の公表とするが、機会があれば学会報告の形でも実施する 。」 しかし、現状では予定していた2週間の研究滞在を実施できるかかなり不確実である。これに代替する方策として、日本の国立国会図書館に所蔵されているイギリスの対日政策に関する資料を用いることも考えられたが、緊急事態宣言の発令によって県境を越えた移動が憚られる状況であり、国会図書館自体も事前抽選予約制となっている。この状況では、国内外の移動を伴う研究方針は実行にあたっての不確実性が高いため、当初は小規模になると想定していた新たな出版物の入手の比重を高めることが現実的と考えられる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の感染拡大により研究実施計画を実行できない状況が生まれたため
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Research Products
(3 results)