2021 Fiscal Year Research-status Report
国際選挙監視活動の機能と逆機能―何が民主主義を促進し何が民主主義を阻害するのか―
Project/Area Number |
18K01477
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
浦部 浩之 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (30306477)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 選挙監視 / 民主主義 / ウクライナ / 欧州安保協力機構(OSCE) / ホンジュラス / ラテンアメリカ / 米州機構(OAS) / 南米諸国連合(UNASUR) |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3(2021)年度は、第1に、研究代表者自身が参加した欧州安保協力機構(OSCE)の2019年ウクライナ大統領選挙監視団の活動について分析し、論文として発表した。1998年から継続されているOSCEによる選挙監視が民主主義的な選挙の定着に寄与している一方、党派性を帯びた国内NGOによる偽装的な選挙監視活動の増大や特定国(具体的にはロシア)の選別的排除といった新たな問題がウクライナでも生じていることを明らかにすることができた。なお、本論文の公刊をもって、筆者自身が参加経験をもつ8か国12回の選挙監視活動について論文のかたちで個別的に総括するとの中間目標が達成された。今後はこれら全体を体系化し、各国間、地域間比較を行いつつ、選挙監視活動の歴史的変遷を国際関係における選挙監視活動に関わる理念の変遷のなかに位置づけていくことが課題となる。 第2に、2009年ホンジュラス選挙での監視団派遣の是非をめぐって生じた米州諸国間の亀裂について、あらためて資料を整理し、また当時これに関わりをもった関係者へのオンラインでのインタビューなどを進め、学会で報告した。第3に、米州での選挙監視活動の主軸となる米州機構(OAS)が域内諸国間の政治的対立により著しく機能が低下していることについて分析を進め、学会の査読誌1本を含む計2本の論文として発表した。今後はOSCEとOAS、そして国連による選挙監視の比較を精緻化していくことが課題となる。 こうした一次資料や文献の分析・研究について一定の進捗はあったものの、OSCEやOAS、バルカン諸国、中米諸国、ベネズエラなどでの現地調査が、新型コロナウイルス問題による渡航制限のため、令和2(2020)年度に続きまったく実施できなかった。そのため、これに関わる経費は支出せず、研究期間を1年間延長することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス問題による渡航制限のため、令和2(2020)年度に続き令和3(2021)年度も当初計画していた現地調査がまったく実施できず、聞き取り調査や一次資料の収集、文献収集などが大きく遅れ、所期の目的が達成できずにいる。こうした事態の発生は研究計画の立案当初にはまったく予期できなかったことであり、研究代表者の努力や責任では解決不能なものであった。現地調査に拠らずに収集可能であった一次資料や文献に基づく事例研究などでは一定の成果を上げることはできたが、残念ながら、当初の目標との乖離を埋めるには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
幸い本研究課題の研究期間の1年間延長が認められた。日本や諸外国の渡航制限も緩和される方向に向かっているように思われる。感染症の問題に加え、研究対象国のうちの一つであるハイチでは昨年発生した大統領暗殺事件以来、極度に政情が悪化し、またウクライナでは本年2月から武力紛争が激しい状態にあり、本年度内に現地調査ができる見通しはなかなか立たないが、それ以外については、申請時に掲げた最終的な目標は変更せず、状況を見極めながら現地調査を行うことの可能性を探っていきたい。本年度中にはウクライナでの選挙監視活動に関し、グローバル・ガバナンス学会で発表を行い、また共著書『ウクライナ戦争と国際政治(仮題)』(早稲田大学出版)を公刊する計画が定まっている。選挙監視活動の歴史的変遷について取りまとめる論文の発表なども行っていくつもりである。
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Causes of Carryover |
本研究では欧州(ウクライナ、ベラルーシ、バルカン諸国など)と米州(米国、中米諸国、ベネズエラなど)における現地調査を進めることを計画しており、その予算を確保していたものの、新型コロナウイルスに起因する渡航制限のために、令和2~3(2020~21)年度の2年間にわたって現地調査がまったくできなかった。また研究成果を発表する学会も、すべてオンラインで開催され、旅費の支出がなかった。これが次年度使用額が生じた理由である。本年度(2022年度)は一定程度、渡航制限が緩和されることが見込まれており、研究計画立案当初に立案していた現地調査を行う。また、対面形式で行われる予定の学会にも参加し、研究成果を発表する。前年度未使用額は、これらの調査や学会発表に必要な経費を中心に支出することを計画している。
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Research Products
(5 results)