2018 Fiscal Year Research-status Report
Statelessness at the Dawn of the Refugee Regime
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18K01479
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
新垣 修 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (30341663)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 無国籍 / 国際連盟 |
Outline of Annual Research Achievements |
難民に関する国際レジーム(難民レジーム)が形成され始めた国際連盟時代(1920-30年代)、無国籍は、そのレジームにおいてどのような意義を有していたのか。本研究の目的は、難民レジーム形成過程における無国籍の位置付けと機能を詳らかにし、現代の国際実行の源流を探ることである。即ち、これまで明らかにされてこなかった歴史的過程を可視化するとともに、国際レジーム論の観点から認識や原則、規範、意思決定手続、オペレーション等を分析することである。同時に、過去が現在に伝える示唆を考求するのも目的の一つである。 黎明期の難民レジームを調査対象とする本研究は、これまでほとんど本格的に検討されたことのない複数の特性に着目している。まず、初期の難民レジームの保護対象となった人的範囲の認定において、無国籍が決定的条件に課されていた事実に目を向ける。第2に、本研究は、黎明期の難民レジームにおける、無国籍性を起点にした意思決定手続とオペレーションの革新性に着眼する。 2018年度は、難民レジームのアクターの無国籍に対する認識に重点を置いて調査を開始した。黎明期の難民レジームのアクターは、無国籍性に付随する事象を、国家の単独行動や2カ国間の取り組みだけでは解決できない、国境を超えた問題と捉えていた。それを念頭に、欧州において一次資料の収集に注力した。具体的には、オランダ、スペイン、イタリアの公的機関などを訪問し、データを入手・確保した。また、この課題に精通する専門家に聞取り調査を行うことで、フォローアップも行った。加えて、公表されている論文等を再検証することで、これまでの理解・解釈の正当性を確かめることができた。また、ここまでの調査に関連する報告なども行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は特に、黎明期の難民レジームにおけるアクターの認識や原則、規範、ルール、意思決定手続、オペレーションの形成過程における無国籍の地位や役割を歴史的視座から検討し、無国籍への現代の国際的対応の起源を掘り起こすことを強く意識し、それに資する情報収集に注力した。 オランダ、スペイン、イタリアで収集した一次資料には現代の制度や規範に関する情報が多く含まれていたが、そこにも、諸国が国際フォーラムを通じて国際的問題として認識してきた無国籍性の要素が導入されていることを知った。また、訪問した公的機関などでは、資料の入手のみならず、歴史性に裏打ちされた慣行と意識をその現代の行政・司法実践でも垣間見ることができた。歴史的継続については、学術専門家や行政官への聞取り調査でもある程度確証を得ることができた。以上の他、先行研究を再読し、これらが十分に議論していない点や見逃している点について気づきを得ることができた。 イタリアの国際会議では無国籍児について報告したが、彼らの保護について時代を遡って検証し、各時代における連続と断絶についても議論することができた。また、難民レジームに関連するその他の成果も発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1922年「ロシア難民に対する身分証明書の発給に関する取極」、1924年「アルメニア難民に対する身分証明書の発給に関する計画」、1928年「ロシア難民及びアルメニア難民の法的地位に関する取極」、1928年「ロシア難民及びアルメニア難民にとられた一定の措置を他の範疇の難民に拡張することに関する取極」、1930年「国籍法の抵触についてのある種の問題に関する条約」、1933年「難民の地位に関する条約」、1938年「ドイツからの難民の地位に関する条約」等における「無国籍の要素」を探る。また、これらの国際文書から、現代の国際実行の源流を分析する。加えて、主要文書については交渉過程を紐解き、規範形成における無国籍性のインパクトを検討したい。 さらに、意思決定手続やオペレーションにおける無国籍の位置付けについても分析を開始したい。
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Causes of Carryover |
コンピュータ購入などの金額を抑えることができたため、次年度使用額として繰越すこととする。
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Research Products
(3 results)