2020 Fiscal Year Research-status Report
Making of International Thought in modern Japan: International Cultural Relations as "Encounter with the unknown"
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18K01481
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
芝崎 厚士 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 教授 (10345069)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グローバル関係研究 / 時政学 / 未知との出会い / グローバル文化交流 / 箱根会議 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は最終年度となる予定であり、2020年度および本年度に刊行した本研究の主要な諸成果に関する研究報告等を行い、その成果について公開の場で議論すると同時に、その後の研究の展開を模索することを主眼とした。 主な研究報告としては、『国際文化交流と近現代日本』(有信堂高文社、2020年)について、第1に日本国際政治学会2020年度研究大会で、第2に世界政治研究会において研究報告を行った。さらに国際交流基金のバンコク日本文化センターが主催したCULTURE AND DIPLOMACYと題する国際ワークショップにオンラインで参加し、関連する報告を行った。同書については、オンラインで学部生・大学院生、留学生、研究者から社会人など幅広い参加者とともに、数多くのゲストや同書で扱った研究対象である人物を招いて議論するゼミを通して、その学問的達成や社会的な意義などを検討した。その成果は別途論集で公刊した。加えて、箱根会議の参加者たちのOB会をオンラインで立ち上げることにも関与した。 さらに、「未知との出会い」の理論的・哲学的な基礎となる、国際社会・グローバル社会の時間論・空間論的な問い直しを行う作業も進め、高橋良輔・山崎望編『時政学への挑戦』(ミネルヴァ書房、2021年)に「国際関係研究における時間論」として発表した。同論文は、2021年から代表として開始した基盤(B)「グローバル関係論の時間論的基礎付けのための比較理論研究」と本科研を理論的に架橋するものであり、本科研の最終年度の総括を施しつつ、その総括の成果を基盤(B)科研に接続していくことになるものである。加えて、分担として参加している基盤(B)「近代日本における新カント派受容の歴史と意義」において、「未知との出会い」や時間・空間論をさらに哲学史および哲学的に精錬する方向性を見出すこともできた。以上が主要な研究実績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年2月に、理論的な総括となる論文、また理論・実証的な考察の核となる単著を刊行し、それらの業績を基礎にして、各種国内・国際学会や研究会ないし多様なゲストを招いたオンラインゼミなどの場で、その学術的な意義や社会的な意義について、国内外の多様な研究者、実践者、関心を持つ人々と広く自由に議論することができた。 加えて、今年度から開始しているいくつかの発展的な研究の基礎固めとなる人的ネットワークの構築も進展し、箱根会議関係者、柳父章研究関係者、国際日本文化研究センターと2021年度から行う柳澤健をめぐる共同研究、前出の基盤(B)科研「グローバル関係論の時間論的基礎付けのための比較理論研究」などへと研究成果を接続していく見通しを得ることができた。 さらに分担研究者として参加している基盤(B)「近代日本における新カント派受容の歴史と意義」における哲学的な議論によって「未知との出会い」に関するより根源的な考察の基礎固めを行い、同時に『時政学への挑戦』などへの寄稿、「ポスト・グローバリゼーション」に関する論文の執筆などにおいて、理論と実証の基礎を固める研究成果を発表、準備することができた。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は次の4点に集約される。 第1に、本科研の主題である「未知との出会い」としての「国際文化交渉」に関して、さらに実証的、理論的考察を重ねて、理論的・思想的な概念を洗練していくと同時に、それらを適用した実証研究をさらに進めていくことである。 第2に、国際日本文化研究センターとの共同研究「国際的文化発信のなかの日本像―柳澤健の学際的研究―」における考察を、「未知との出会い」としての「国際文化交渉」という視点から「近現代日本の国際関係思想の形成」が看取される、戦前から戦後における重要な事例として扱うことで、主に1970年代以降の日本を考察していた実証面をさらに歴史的に掘り下げていくことである。 第3に、代表として参加している基盤(B)科研「グローバル関係論の時間論的基礎付けのための比較理論研究」における理論的・思想的な考察は、本科研の理論的・思想的な基礎づけという課題と密接に関連するものであり、ここでの時間論・空間論的な検討によって、本科研の最終的な総括に活かすことにしたい。 第4に、分担研究者として参加している基盤(B)「近代日本における新カント派受容の歴史と意義」は、「未知との出会い」における「時間論的基礎づけ」の課題を日本の哲学・哲学史の文脈およびグローバルな哲学・哲学史の文脈から実証的・思想史的により深く掘り下げる研究であり、これを進めることによって、第3の方策と併せてさらに深く「未知との出会い」、「国際文化交渉」について探求を深めていくこととしたい。
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Causes of Carryover |
COVID-19パンデミックの影響により、研究活動の総括的なまとめに支障を来したため。
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