2019 Fiscal Year Research-status Report
A critical analysis of marine institutional interplay: Does environmental law include law of the sea?
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18K01482
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
都留 康子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (30292999)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ガバナンス / 海洋 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、引き続き「国家管轄権外の生物多様性」(BBNJ)の国連での交渉過程の検討を中心に行った。その過程では、日本がどのような役割を果たしているかの視点も不可欠であることから、BBNJ研究会(坂元茂樹座長)を通して、日本代表団に加わっている研究者や交渉官と意見交換を行う機会を利用し、研究報告などを行った。 これまでは海洋法に対して環境法が浸潤した、あるいは、相克という前提で検討を進めてきたが、1970年代からの環境法の発展の歴史的な検討を行うことによって、新たな知見を得ることができた。すなわち、持続的な開発(sustainable development)が先進国と途上国の共通のキーワードとなり、1992年のリオサミットを迎え、生物多様性条約も同時期に採択された。このリオサミットが大きく影響して1994年の国連公海漁業条約が締結へと至ったが、この条約の中でも、エコシステム(生態系)が海洋法の中でも重視されるようになり、生態系を前提とする持続的開発(利用)が規範的な役割を果たしている。リオサミットが、環境問題と海洋の結節点ともいえるであろう。国連公海漁業条約以降は、「公海自由の原則」を基本としながらも、海洋生物資源に、生態系も考慮した管理、保全が求められるようになったのである。 こうしてみると環境法の影響をうけた海洋法という印象を受けるが、ここでBBNJの議論が常に「国連海洋法条約」に合致しなければならないと確認されながら発展してきたことに注意が必要である。UNCLOSを母体とする非公式締約国会議でも次々環境分野でのイシューがとりあげられてきたことを考えると、海洋法が環境の国際法で扱われていた問題を吸収しつつ、影響をうけながら発展してきたともいえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度2月には台湾での中国文化大学での講演ならびに海洋法研究者との意見交換を予定し、3月にオランダのユトレヒト大学の海洋法研究所、国際司法裁判所の図書館などを利用し、同時に環境NGOのインタビュー調査なども準備していたが、COVID19の影響で、断念せざるを得なかった。これらは、2年間の研究成果の批判的検討と、資料・インタビュー調査による補強の意味があっただけに、研究の進捗上、大きなマイナス要因となった。しかしながら、その準備として、文献調査、国内での研究会での報告などは積極的に行っており、とりわけ、国連で行われている国家管轄権外の生物多様性(BBNJ)会議についての詳細な検討、その中での環境法と海洋法についての関係性については、海外の文献も含め網羅的に検討できている。 その過程では、環境法と海洋法についての相克という視点から、両者は補強関係にあったのではないかという視点の転換を行っている。すなわち、そもそものBBNJについての関心は、1992年の生物多様性条約の採択以降、締約国会議で議論が積み重なることによって発展を遂げてきた環境法からの筋道が一つとすると、他方で、海洋の漁業資源の公海上での悪化に鑑み、大型流し網漁の規制をおこなうなどの国連決議によって、海洋の環境保全、持続的発展概念が定着し、「公海漁業条約」が採択されるにいたったという海洋法からの要請も強くあったものである。 海外調査ができない分、十分な文献・資料調査ができことは有益であったし、また国連会議それ自体も今、開催されない状況下で、COVID19の根源としての海洋を含めた地球規模での生物多様性の関心が高まっており、今後の会議の進展が不透明であるとともに、興味深い段階に入っているともいえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度であることから、国際学会での報告やシンポジムでの討論者としての登壇を予定していたが、COVID-19の影響のため、オンライン学会などに変更されるものと思われ、引き続き参加を求めていく。また昨年度末に断念した、海外での資料・インタビュー調査は、すでに準備が整っている。幸いにも9月から研究専念期間であることから、本務校の学期を問わずに、何らかの形で実施する予定である。 また、国連でのBBNJ会議は、複数回必要であると予想されたが、直近のものが延期されており、今後の見通しがたっていない。そのため、本研究の期間に、会議が終了し、結果が出るという形にはならないと思われるが、途中経過を整理することで、本研究をまとめたい。また、これまでの2年間で、条約と宣言、決議などのソフトローとの関係についても理論的な重要性を認識しており、基本的な理論動向なども整理する。 なお、先にも記したように研究専念期間であることを利用して、本研究課題も含め、海洋ガバナンスについての本にまとめる予定でいる。
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Causes of Carryover |
2020年3月(2019年度予算内)に予定していたオランダなどにおける約10日間に及ぶ、インタビュー調査、ユトレヒト大学での研究所の利用を目的とした海外渡航が、Covid19の影響で先方からキャンセルになったため。渡航禁止が解除されると思われる今年度中に実施すべく、繰り越しを行つている。
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