2019 Fiscal Year Research-status Report
China as an emerging aid donor and its impact on international aid regime
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18K01484
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
稲田 十一 専修大学, 経済学部, 教授 (50223219)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国の援助 / 北京コンセンサス / 国際援助体制 / 一帯一路 / ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアにおける中国の援助の実態を具体的に把握・収集し、その経済社会及び政治外交上のインパクトを検証・分析することが、本研究の中心テーマである。2019年度は、特に2000年代に中国から多額の経済支援・借款を受け入れ、中国への過度の経済的依存に陥ったのち、2011年以降の民主化後の変化が国際的に注目されているミャンマーの現地調査を、2020年2月に実施した(13日間)。現地調査では、ヤンゴン大学の教員・専門家のネットワーク等を活用しながら、ヤンゴン市周辺の輸出加工区や農村・商業地域の実態調査を実施したほか、カチン州での中国の大型事業(ミッソンダム)を実査するとともに関連団体・住民等にヒアリングを行い、ミャンマーでの中国の進出状況を実査し、関連資料・情報を収集した。 また、中国の「一帯一路」政策の実態とその影響についての情報収集のため、前年度に引き続き、インターネットの関連サイトや関連文献の購入などを通じて数多くの関連文献・資料を入手し整理・分析した。また、関連セミナーへの参加を通じて、本テーマについての最近の研究調査動向を把握し、関連研究者の研究成果を確認するととも、研究ネットワークの拡大に努めた。 これまでの研究成果については、2018年度に現地調査を実施したスリランカについて、その研究成果を『専修大学・社会科学研究』にて論文として掲載した(雑誌論文の欄を参照)。また、カンボジアとラオスの事例について、「ドナーとしての中国の台頭とそのインパクト-カンボジアとラオスの事例」と題する論文を、金子芳樹・山田満・吉野文雄(共編)『一帯一路時代のASEAN』に掲載した(図書の欄を参照)。また、本科研テーマに関連する研究成果(英文)の発表・報告(英語)を、2019年6月および8月および12月に実施した(いずれも国際学会での英語による論文報告、学会報告の欄を参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で、アジアにおける中国の援助の実態・関連データを具体的に把握・収集し、そのインパクトを検証・分析するための現地調査の具体的な対象国としてミャンマーをあげており、2018年度に実施できなかったミャンマーの現地調査を2019年度に実施し、きわめて内容の濃い調査を実施することができた。 また、当初計画では、中国での現地調査を計画していたが、引き続き関連相手先との面談が困難であったため延期し、中国の援助や経済的プレゼンスの拡大が既存の国際援助体制の中でどのように位置づけられるか、その実態と課題は何か等についての関連情報・資料収集は、主として日本国内での文献調査・関連セミナーへの出席等により進めた。 なお、本科学研究費以外の予算を使って、2019年10-11月にフィリピンにて現地調査をする機会があり、その機会に、フィリピンにおける中国のインフラ整備事業に関連する情報を収集するとともに、中国による事業と日本のODA事業や世界銀行・アジア開発銀行などの国際機関の事業との比較・優劣などについてのヒアリングや情報収集をする機会を得ることができ、本研究を進める上でも大いに役立った。
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Strategy for Future Research Activity |
アジアにおける中国の援助の実態とそのインパクトを検証・分析するための具体的な対象国として、2019年度に現地調査を実施したミャンマーについては、その研究成果を2020年夏頃までに論文としてまとめ、その内容を、同年10月の日本国際政治学会・全国大会で報告予定である。 また、中国の援助や経済的プレゼンスの拡大が既存の国際援助体制の中でどのように位置づけられるか、その実態と課題は何か等については、文献調査や関連セミナー等への出席を通じて引き続き関連情報・資料収集するほか、中国での現地調査、あるいは中国の関連研究者との合同研究会の実施を計画している。 なお、中国の一帯一路事業や経済支援が国際開発援助体制に与えるインパクトや途上国の経済社会や政治外交に与える影響・課題全般について、事例研究を含めて包括的に整理・分析した論文の公開、書籍の出版をめざして、関連原稿の執筆を進めている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由としては、現地調査対象である中国での現地調査が、日中関係や中国の国内状況の影響もあり、中国側の調査対象機関・研究機関・研究者への訪問・ヒアリングの準備が整わず、今だ実施されていないことにより、旅費・人件費・謝金が未消化であることが大きい。2020年度中の実施を計画しているが、新型コロナウイルスの拡散にともなう混乱により、2020年度に実施できるかどうか不確定である。その場合、国内調査で必要な関連情報を収集するほか、中国以外の他のアジア諸国での現地調査を実施することで代替する可能性がある。 なお、物品費の未使用額については、2020年度の最初に、今後の研究成果のとりまとめに必要な物品としてデスクトップPC(約20万円)を購入予定であり、これによりほぼ計画どおりの支出となる。
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