2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の南極外交に関する基礎的研究:変容する南極レジームへの対応とその要因
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18K01487
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大久保 彩子 東海大学, 海洋学部, 准教授 (40466868)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 南極条約 / 国際協力 / 環境外交 / 南極海 / 海洋保護区 |
Outline of Annual Research Achievements |
南極地域の非軍事化と科学協力から出発し、資源管理と環境保全を軸とした国際協調体制へと変容してきた南極レジームに対する日本の政策的対応のあり方を具体的に把握することを目的に、文献調査とインタビュー調査を実施した。主に南極鉱物資源活動規制条約ならびに南極海洋生物資源保存条約の政府間交渉における日本の対応について、特定歴史公文書等利用請求および行政文書開示請求を実施しながら文献調査を進めた。 鉱物資源活動規制条約の交渉においては、日本は南極条約体制の維持、資源開発による自然環境への悪影響の回避、南極地域における人類全体の利益を損なわないことの3点を基本的方針として掲げつつ、各論においては、領土権主張を行わないノンクレイマントとしての立場の維持を最優先とし、環境影響については簡潔な記述にとどめることを目指した対応がとられたことが確認された。一方で、海洋生物資源保存条約に関しては、漁業国としての立場を明確にし、独自の条約案を提示するなど、より踏み込んだ対応がなされたことが示唆された。 また、南極海洋生物資源保存条約の実施機関である南極海洋生物資源保存委員会における最近の主要議題の一つである海洋保護区の交渉過程について、同委員会の公式文書の分析および関係者へのインタビュー調査を行い、交渉の経緯を把握するとともに、南極ロス海の海洋保護区に対する日本の交渉態度の説明要因について、1)南極条約体制におけるノンクレイマントとしての立場の維持、2)海洋生物資源の利用から生じる利益、3)南極の環境保全に対する関心、という3つの視点から予備的な検討を行い、国内外で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南極鉱物資源活動規制条約および南極海洋生物資源保存条約について、条約草案の交渉段階における日本の対処方針と実際の対応を歴史公文書にもとづき明らかにすることができた。しかしながら、近年の南極条約協議国会合における政府間交渉に対する日本の対処方針に関しては非公開とされた部分も多く、行政文書以外の情報源を活用して把握していく必要性が確認された。 こうした課題が明らかになった一方で、南極海洋生物資源保存委員会における海洋保護区に関する政府間交渉への日本の対応については公式文書の分析、インタビュー調査、予備的考察および発表を行うことができた。 以上から、本研究はおおむね順調にし進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
南極条約体制が環境保全レジームとしての性格を強めていく1990年代以降の時期について、引き続き公文書等の文献調査およびインタビュー調査を進めていく。特に、鉱物資源活動規制条約の未発効から環境保護議定書の採択へと急展開する南極条約体制の転換期における日本の南極外交のあり方とその説明要因を明らかにすることを目指す。近年の南極条約協議国会合における日本の対処方針を公文書に基づき把握することが困難であることが示唆されたことから、二次文献を含む情報源についても適宜活用することとし、また、国会議事録や新聞記事データベースの活用により国内の議論を分析していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は当初、歴史公文書の調査のための旅費として想定していたものであるが、既公開分の公文書の内容を精査したうえで新たな公開請求を行うために時間を要し、新規公開分の調査を次年度に持ち越す必要が生じた。当該使用額については、次年度において、公文書の調査のための旅費として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)