2020 Fiscal Year Research-status Report
日米韓の安全保障関係の形成と展開に関する歴史的および政策的研究
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18K01490
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
李 鍾元 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (20210809)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日米韓 / 米韓同盟 / 日韓関係 / インド太平洋 / 北朝鮮 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目の2020年度は最終年度になるはずであったが、コロナ禍による研究の遅滞で、研究計画を予定通り遂行することができず、1年延長することになった。当初の計画では、2019年度末から延期になっていた米国や韓国での現地調査(資料収集および関係者面談)を行う予定であったが、新型コロナの感染拡大のため、海外への渡航ができず、実施できなかった。その代わり、昨年度に引き続き、文献調査とともに、各種オンラインデータベースを活用した各国の外交文書の収集、各国のシンクタンク報告書の分析に注力した。近年、U.S. Declassified Documents Onlineなど有用な外交文書データベースが利用できるようになったのは幸いであった。日米韓関係に関する学術的な研究文献に加え、政策報告書や外交文書については、現在入手可能なものを中心に体系的な収集を進めている。 研究成果の公開としては、まず、日米韓トライアングルの原点ともいうべき日韓国交正常化(1965年)における米国の役割について、これまで公開された三国の外交文書を精査し、「金・大平メモ」に焦点を合わせた論考を英文で執筆し、北海道大学スラブ研究センターが主催した冷戦史国際シンポジウムで発表した。このシンポジウムの成果は別途英文で出版を進めている。また、現在の課題に関する成果として、米国バイデン政権の対北朝鮮政策論議を分析し、日米韓協力の位置づけをも取り入れた論文を発表した。 その他には、日韓関係の悪化に伴い、日韓両国で多くの国際学術会議や研究会が開かれたが、それらに招聘されるなどの機会を活用し、日米韓関係の歴史的推移と現状について研究発表を行い、その一部は日本語や韓国語で刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が全般的に遅滞している最大の理由は、新型コロナの感染拡大が止まらず、韓国や米国での現地調査ができなくなった状況のためである。とりわけ、韓国と米国の公文書館での調査を中心的な課題として予定していたが、それができなかったことは研究遂行において大きな障害になっている。それを補うべく、所属大学をはじめ、日本国内の図書館に所蔵されているオンラインデータベースやマイクロ資料などを包括的に調査し、資料収集を行った。とりわけ、U.S. Declassified Documents Online, National Security Archive, Wilson CenterのCold War International History Projectなどは最近の資料まで含まれる場合があり、有益であった。政府の公式文書は各国の省庁のウェブサイトでの開示が充実しており、米国や韓国のシンクタンクは、報告書や関連資料を積極的にオンライン開示しており、それらの資料はほぼ網羅的に収集、分析することができた。 関係者の面談については、これも予定通り実施することはできなかったが、日韓関係の悪化に伴い、両国の研究機関や政府系シンクタンクなどの主催による国際会議やセミナーが多数開かれ、それらに招聘された機会を利用して、意見交換を通じて知見を得ることができた。直接の面談調査に比べると不十分ではあるが、各国の政策担当者の見解や政策の方向性などをある程度確認することは可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年延長となった2021年には、韓国や米国での現地調査を行う予定であるが、新型コロナの感染状況が収束しない場合は、オンラインやマイクロ資料など、日本国内で入手可能な文献資料を中心に研究をまとめる計画である。 また、2019年から行っている情報公開法による日本政府文書の開示請求は引き続き行い、日本外交における日韓および日米韓関係に関する一次史料の収集を試みる予定である。 以上の資料収集を踏まえて、最終年度の作業として、日米韓関係の歴史的推移および現状、展望をめぐる各国の政策論議を整理するとともに、米国のバイデン政権でより明確になりつつある二国間同盟の多国化(地域化)を分析枠組みとして、包括的な把握に努める。とりわけ、インド太平洋戦略の下、バイデン政権が進める日米豪印のQUADやG7の拡大論議(D10)、その他、争点領域別の有志同盟型の協力枠組みの構想などの背景や経緯を中心に、日米韓トライアングル関係の変容を歴史的かつ政策論的な視点から分析し、論文として発表する。 研究成果の公開としては、以上のような視点からの論考を学会誌や紀要に投稿すると共に、国際会議やセミナーなどを場で、各国の専門家と意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナの感染拡大のため、韓国や米国での現地調査ができず、調査費として計上した予算が実行できなかった。同じく、海外での資料調査の際に予定した面談協力者への謝金も支出できなかった。 1年延長になった今年度に新型コロナの状況を考慮しつつ、韓国での資料調査や面談調査を実施する際に、関連費用として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)