2021 Fiscal Year Research-status Report
Social Construction of the renewable energy market in US: an analysis focusing on the strategic aspects of RE
Project/Area Number |
18K01493
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
小尾 美千代 南山大学, 総合政策学部, 教授 (70316149)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 気候危機 / 脱炭素化 / カーボンニュートラル / 機関投資家 / Climate Action 100+ / エンゲージメント / TCFD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、気候変動への重要な対応策である再生可能エネルギーの導入拡大に注目し、温室効果ガス排出大国のアメリカにおける再生可能エネルギー市場の社会的構築の解明を目的としている。分析にあたっては、州政府・主要都市などの政府系アクター、多国籍企業や大手金融機関などの民間経済アクター、米軍を含めた国防総省を中心とする軍事アクターの3つを主な分析対象としている。 2021年度は4年間の研究計画の最終年度にあたり、昨年度に引き続き、機関投資家を中心とする民間経済アクターに焦点を当て、金融分野など民間での脱炭素化の動きを中心に研究を行った。 近年、機関投資家を対象とするカーボン・ニュートラル実現を目指す様々な国際的なイニシアチブが発展し、参加メンバーが増加している傾向が見られるようになっている。Climate Action 100+はそうしたイニシアチブの一つであり、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア、アジアの投資家ネットワークと、環境に配慮した投資を促す世界共通のガイドラインである「責任投資原則(PRI)」が協同で設立した、気候変動対応を世界的に推進する5年のイニシアチブである。このClimate Action 100+に、世界最大の資産運用機関であるブラックロックが2020年1月に参加することが発表され、続いて、持続可能性を重視した投資方針への転換が発表された。そして、2021年には気候変動リスク開示の対象を従来の上場企業だけではなく、非上場企業にも拡大する制度改正を強く主張するようになっている。他方で、同社は石炭業界への多額の投資を継続させており、石油・ガス会社から一律に資本を引き揚げる方針はとっていないことも明言している。こうした点に脱炭素化を実践するアクターとしての民間企業である機関投資家の限界が表れていると言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
所属大学において2020年度から大学全体の教務業務を担当する教務部長に任命され、折からの新型コロナウイルスへの対応から業務量が通常以上に多くなり、相当の時間を費やさざるを得ない状況が2021年度も続いた。加えて、自身の健康上の問題が生じて最終的に入院・手術による治療が必要な状況となったこともあり、研究に充てる時間が制約されてしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画に沿って、州政府や主要都市の準国家アクター、多国籍企業や大手金融機関などの民間アクター、国防総省および米軍の3つのアクターを主な分析対象として研究を進めていく。アメリカでは気候変動政策に消極的であった共和党のトランプ政権に代わって、2021年からは積極的な気候変動政策を前面に打ち出した民主党のバイデン政権が政権を担っている。しかし、新型コロナウイルス関連での物流の遅延に加え、ロシアのウクライナ軍事侵攻による原油価格高騰に起因するインフレへの対応策として、石油開発の規制緩和がなされるなど情勢の変化が見られることから、連邦政府レベルでの政策の変化についても注視していきたい。 また、これまでは軍事アクターによる再生可能エネルギー導入については研究があまり進められなかったが、2022年度については、成果を公表できるように研究を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
2021年度は、参加を予定していたアメリカでの国際学会やアメリカ政治学会が新型コロナウイルスの影響で実現できず、それに合わせて予定していた資料収集や、英文チェックのための謝金についても支出できなかったことから、使用額が予定を下回った。 2022年度については確実に参加できる国内での学会やオンライン開催の学会での報告に加えて、論文の公刊について積極的に対応していきたい。
|
Research Products
(2 results)