2019 Fiscal Year Research-status Report
日本外交における「自主」「自立」の実像と虚像ー1950年代の対米自主路線の考察
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18K01498
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
楠 綾子 国際日本文化研究センター, 研究部, 准教授 (60531960)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 安全保障 / 日本外交 / 対日講和条約 / 日本占領 / 1950年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、夏期に台湾・中央研究院近代史研究所が所蔵する史料を調査した。対日講和条約・日米安保条約、日華平和条約に関する政策決定、日華関係、米華関係、1950年代の2度の台湾海峡危機をめぐる国際関係などを中心に多数の史料を収集することができた。国民党政権にとっての冷戦を考える手がかりとして有用な文書であると考えている。また2月には米国・コロンビア大学図書館が所蔵するオーラル・ヒストリーのコレクションを閲覧し、アイゼンハワー政権期の軍部指導者や国務省関係者の証言を収集した。 これに並行して、2019年度は過去8年にわたって調査・収集した米国の公文書の分析を進めた。とりわけ、台湾海峡危機(1954~1955年、1958年)に際してのアイゼンハワー政権の政策決定に関する文書は、米国のアジア太平洋戦略の輪郭を理解する一助となり、日本の外交・安全保障政策の国際政治的意味や東アジア冷戦の実像の考察を進めることができた。同時に、米国の海外基地政策の展開と日米の安全保障関係の接続・非接続の様相について、検討を進めることができた。 一方、米国の主導で進められた占領改革や冷戦後の日本政治・外交、冷戦後の日本の安全保障政策の変容について議論する機会を得られたことは、冷戦期の日本政治・外交を考えるうえでもきわめて有用であった。占領期に形成された政治、社会、経済システムの強靭性や冷戦という国際政治状況を、より長期的な観点から検討する視点を得ることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで調査したことのなかった国民党政権の史料の調査・収集に着手できたことが大きい。中国語の解読には時間を要すると思われるが、米国と日本に偏りがちな視野を広げる機会になると考えている。また、収集した史料の分析が軌道に乗りはじめた。他方で、3月に参加を予定していたInternational Studies Association(ハワイ)が、新型コロナウイルスの感染拡大のために中止されたために、アメリカの冷戦研究者や国際政治学者との間で冷戦期の日本外交・安全保障政策について議論する機会を失ったことは残念である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに調査・収集した日本、米国、英国、オーストラリア、台湾の公文書の分析を進めるとともに、新たに公開された文書の調査・収集を進める。同時に、鳩山一郎内閣の外交・安全保障政策を、日米関係を中心に包括的に検討し、1950年代の日本がもっていた(と思われた)選択肢とその可能性について考察を深めたい。 新型コロナウイルスの感染にともなう渡航制限のため、海外での史料調査や海外の冷戦研究者との研究交流がどの程度可能か見通せない状況ではあるが、とくに後者については可能な手段を使って交流の機会を作りたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため、3月に東京やハワイで予定していた史料調査・収集を中止せざるを得なくなったため、次年度使用額が生じることになった。 2020年度は、行動の自由が回復次第、史料調査・収集に着手する。またプリンター等パソコン周辺機器の購入を予定している。
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Research Products
(4 results)