2020 Fiscal Year Research-status Report
日本外交における「自主」「自立」の実像と虚像ー1950年代の対米自主路線の考察
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18K01498
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
楠 綾子 国際日本文化研究センター, 研究部, 准教授 (60531960)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 安全保障 / 日本外交 / 対日講和条約 / 日米安保条約 / 1950年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大によって、海外はもとより国内での史料調査もほとんど実施できなかった。唯一、11月に国立公文書館で防衛庁に関する史料(防衛力整備や自衛隊の活動に関する国会答弁の資料)を閲覧した。 史料調査が滞ったぶん、前年度までに収集した史料の分析を進めることができた。基地の運用に関する日米両政府の協議、防衛分担金交渉、自衛力建設、米国政府内の日本の政治、経済、社会の動向分析と対日政策の検討など、これまでの分析を補完し、あるいは深める材料を多く得ることができた。 研究成果の発表については、まず、史料調査・分析やこれまでの研究成果を踏まえて、サンフランシスコ講和条約・日米安保条約の締結とその日本の近現代史、冷戦期の国際政治における意義について、いくつかの研究報告や論文の形で発表することができた。とくにサンフランシスコ講和条約については、1950年代以降の韓国や国民党政権との関係を規定する枠組みとなるものであり、条約が持つ意味を検討する機会となった。第二に、日米安保条約の運用と同盟の制度化をめぐる日米関係について、防衛分担金をめぐる日米交渉について学会誌(『防衛学研究』)に論文を発表することができた。また書評の形でより長期的な視点に立って考察を深めることができた。第三に、憲法を基礎とする統治システムや平成期の日本政治についての分析を通じて、冷戦後の日本の外交・安全保障政策について考察することができた。より長期的な視野に立って冷戦期の日本外交を分析することが可能になったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の拡大によって、国内・海外での史料調査・収集がほとんど実施できなかったために、研究を進めるうえで必要な史料の調査は停滞している。他方で、昨年度までに収集した史料の分析や研究成果の発表はある程度進んでいる。また学会や研究会での報告や討論などの機会を通じて、冷戦研究分野の研究者とのネットワークも少しずつ生まれており、今後の研究を展開する基盤を築くことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
国内移動の自由が回復され次第、東京(国立公文書館、国会図書館、外交史料館)での史料調査・収集を再開する。海外渡航制限は当面続くと予想されるため、オンラインでの入手の可能性を探りたい。渡航制限が緩和され次第、こちらも調査の実施を検討する。 ひきつづき史料の分析を進め、1950年代の日米関係の構図を示すことをめざしたい。また、米国や韓国、台湾、中国などの冷戦研究の成果を踏まえつつ、アジア太平洋地域における西側諸国間関係の分析も進めたい。
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Causes of Carryover |
国内・海外とも移動の自由が制限されたために資料調査・収集がほとんど不可能になり、国内外の学会・研究会への参加や海外研究者の招致も困難またはオンラインでの実施となったため、予定された支出がほぼなくなった。2021年度は可能な範囲で上記の事業を進める。また、英語論文の刊行や史料の翻訳などにも充当したい。
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Research Products
(5 results)