2018 Fiscal Year Research-status Report
A Theory of Time Preference with Cognitive Optimization
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18K01503
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
武岡 則男 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80434695)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 異時点間選択 / 時間選好率 / マグニチュード効果 / 金額効果 / 認知的最適化 / 利他性 / 加法分離性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、異時点間の割引率、または時間選好率を、現在の自己の将来の自己への利他性として解釈し、将来の自己への共感の割り振りという認知的最適化によって割引率が決定されるモデルを考察する。この仮説の背後にあるのは、異時点間選択の実験で観察されるマグニチュード効果(金額効果)である。この効果は将来の大きな利得ほど割引されにくい傾向を示唆するので、将来利得が大きいほど、現在の自己が将来の自己に共感し、その立場に立って考えるインセンティブは強まると考えられる。一方、将来の自己への共感は、現在の利己性を抑制する点で、心理的負担を伴う作業でもある。本研究の目的は、このような利得とコストの最適化という認知プロセスを経て時間選好率が決定されるという仮説を選択行動の観点から基礎付け、さらなる応用研究を行うことである。本研究はボストン大学のJawwad Noor氏との国際共同研究である。共同研究者とは主にメールやSkypeなどを使って意見交換を行ったが、アイデアを自由に出し合うには、直接会って議論することも必要となる。申請書で予定していた通り、7月末から8月上旬にかけてJawwad Noor氏を一橋大学に招聘し、集中的に共同研究に取り組んだ。 特に本プロジェクトの初年度である平成30年度は研究の基礎となる公理的分析を行った。その結果、基礎編の論文草稿を完成させ、学術雑誌への投稿を完了した。現在は学術雑誌から改訂&再投稿の知らせを受け、改訂作業を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度に計画していた基礎研究はすべて実施できた。予定していた共同研究者の招聘も行い、効率的に研究を進めた。また国際的な学会で成果を発表し、論文の改善につなげた。30年度中に論文を学術雑誌に投稿することができた。現在、改訂&再投稿の知らせを受け、改訂作業を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
論文の改訂作業を完了し、最終的な採択を目指して今後も共著者とともに研究計画を推進する。その他、実験などで仮説を検証できる簡単な手続きや、関数形を仮定した上での応用などの研究も並行して行う。また今後も継続的に国内外の学会、研究会での発表を通して研究成果をアピールし、研究ネットワークの形成にも努める。
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Causes of Carryover |
残額が数千円だったので、次年度に繰り越しにする。少額のため次年度以降の計画に沿って執行予定である。
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