2019 Fiscal Year Research-status Report
A Theory of Time Preference with Cognitive Optimization
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18K01503
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
武岡 則男 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80434695)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 異時点間選択 / 時間選好率 / 金額効果 / 認知的最適化 / 利他性 / 加法分離性 / 自制と意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、異時点間の割引率、または時間選好率を、現在の自己の将来の自己への利他性として解釈し、将来の自己への共感の割り振りという認知的最適化に よって割引率が決定されるモデルを考察する。この仮説の背後にあるのは、異時点間選択の実験で観察される金額効果(magnitude effect)である。この効果は 将来の大きな利得ほど割引されにくい傾向を示唆するので、将来利得が大きいほど、現在の自己が将来の自己に共感し、その立場に立って考えるインセンティブ は強まると考えられる。一方、将来の自己への共感は、現在の利己性を抑制する点で、心理的負担を伴う作業でもある。本研究の目的は、このような利得とコス トの最適化という認知プロセスを経て時間選好率が決定されるという仮説を選択行動の観点から基礎付け、さらなる応用研究を行うことである。本研究はボストン大学のJawwad Noor氏との国際共同研究である。平成30年度中に、論文の基本的な骨格をまとめ、国際学術誌に成果を投稿した。その後、改訂・再投稿の要請があったため、令和元年度はその要求に応えるために研究を進展させた。共同研究者とは主にメールやSkypeなどを使って意見交換を行ったが、アイデアを自由に出し合うには、直接会って議論することも必要となる。11月下旬から12月上旬にパリ第二大学で客員研究員をする機会を得た。12月にパリで行われた学会にNoor氏が参加予定であったため、この滞在中にNoor氏と集中的に研究打ち合わせを行うことができた。その成果もあり、学術誌の編集者、レフェリーの要求に応える形で再投稿版を完成させることができた。近日中に論文を再投稿できる予定である。また、パリ第二大学では、認知的最適化の元でどのような情報が最適に選ばれるのかという情報獲得の研究をXiangyu Qu氏とともに進めることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度に計画していた基礎研究はすべて実施できた。予定していた共同研究者との研究打ち合わせも行い、効率的に研究を進めた。また国際的な学会で成果を発表した。平成30年度中に研究の骨格を論文にまとめ、学術雑誌に投稿し、改訂・再投稿の要請を受けた。令和元年度はその改訂作業を進め、再投稿の目処が立ったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
論文の改訂作業を完了し、引き続き共著者とともに研究計画を推進する。関連したプロジェクトが複数あるため、それぞれを論文として完成させ、学術誌への投稿を行う。その他、実験などで仮説を検証できる簡単な手続きや、関数形を仮定した上での応用などの研究も並行して行う。また今後も継続的に国内外の学会、研究会での発表を通して研究成果をアピールし、研究ネットワークの形成にも努める。令和2年度より本研究課題を基課題として、国際共同研究強化Aに基づいた研究を進めることとなった。時間選好率の認知的最適化の考えを、意思決定に重要な他の心理的側面(リスク態度、利他性、限定合理性)に拡張する研究である。相互のプロジェクトは密接に関連するため、同時並行で研究を進め、海外赴任後の研究に役立てる。また、パリ第二大学のXiangyu Qu氏と始めた認知的最適化の元での情報獲得の研究も同時に進めることにする。
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Causes of Carryover |
11月下旬から12月上旬にかけてパリ第二大学に滞在して、Jawwad Noor氏やXiangyu Qu氏と共同研究を行うため、令和2年度の研究費を令和元年度に前倒して執行した。その際の予算の余りが未使用額となった。
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