2020 Fiscal Year Research-status Report
ライフサイクル上の雇用・失業と人的資本形成に関する経済分析
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18K01505
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
藤本 淳一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (00507907)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マクロ経済学 / 労働サーチ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究の主な目的は、人々のライフサイクルにおける雇用・失業問題と、そこに密接に関連する人的資本の形成に係る問題を分析することである。令和二年度には前年度に引き続き、以下の3プロジェクトを探求した。 Julen Esteban-Pretel氏(ニューヨーク市立大学クイーンズカレッジ准教授)との我が国の非正規労働者についての共同研究では、日本の労働力調査及び労働力調査特別調査のミクロデータを用い男女別・年齢別・婚姻状況別の正規・非正規の状況を分析し論文にまとめた。当該論文は令和二年度にJournal of the Japanese and International Economiesに掲載された。 David Lagakos氏 (ボストン大学准教授)及びMitchell Vanvuren氏(UCサンディエゴPhD学生)との発展途上国における親の所得と子の教育水準の関係に関する共同研究では、モデルを用いて各種政策の影響についての数値シミュレーションを実施し、論文執筆を進めるとともに学会及びセミナーで発表を行った。 Junsang Lee氏(成均館大学准教授)との長期労働契約に係る理論的研究についてはモデルの枠組みを活かしつつ、応用対象を自律的なマイクロファイナンス機関が結びうる最適金融契約に変更した。分析の結果、マイクロファイナンス機関が最大化しようとする社会厚生関数により最適金融契約の性質が大きく変わること等を発見して論文にまとめた。当該論文は令和二年度にJournal of Mathematical Economicsに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では雇用・失業のモデルをベースに学校教育や企業内訓練を通じた人的資本の蓄積や、女性の結婚・出産による労働市場からの一時的退出等のライフステージを考察に含めることで、ライフサイクル上の人的資本形成と雇用・失業に関する問題を一体的に分析することを目指している。
令和二年度には前述二論文が国際学術雑誌に掲載に至ったほか、学会及びセミナーでの発表を通じ、上記3プロジェクトの研究を着実に推進することができた。現在は、日本の非正規労働問題に関する更なる観点からの分析に基づく論文と発展途上国における教育に係るマクロ経済学モデルの論文の執筆に主に取り組んでいる。コロナ禍により共同研究者を往訪・招聘しての研究打ち合わせができず不便な点はあるが、全体としてはおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
非正規労働者に関するEsteban-Pretel氏とのプロジェクトについては、日本の非正規労働問題に関する新たな論文数本の執筆を行う予定である。具体的には、雇用状況と婚姻状況の関わりに焦点を置いた研究と、正規・非正規の別を導入した労働サーチ・マッチングモデルによる研究を計画している。
発展途上国における教育問題に係るLagakos氏・Vanvuren氏との共同研究については令和三年度中に国内外での学会・セミナー発表を行い、得られたフィードバックを基に論文執筆を一層進捗させる予定である。
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Causes of Carryover |
令和二年度には国際学会への出席や共同研究者の往訪・招聘に費用の支出を予定していたが、新型コロナウィルスの影響で実現できなかった。令和三年度も新型コロナウィルスにより特に海外への渡航や海外からの招聘の実現性は不透明であるが、状況が沈静化すれば可能な範囲で共同研究者の往訪・招聘や関連分野の研究者との意見交換等のため国内外への出張を行う。また在宅勤務時の生産性を一層向上させるべく、PC関連機器やオンライン会議用の設備備品等を随時購入予定である。
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