2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01507
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
関口 格 京都大学, 経済研究所, 教授 (20314461)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 繰り返しゲーム / ゲーム理論 / 不完全情報 / 多市場接触 / フォーク定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
明示解の導出可能性を基本軸として繰り返しゲームの理論を再構築し、「解けるモデル」と「解ける均衡概念」を提示するとともに、組織の経済学や産業組織論などの経済学的応用に繋げるという本研究の目的に照らして、以下のような研究成果を得た。 1.フォーク定理の前提条件を満たさない不完全観測モデルの均衡分析と応用研究について、Radner-Myerson-Maskinの古典的研究における繰り返しチーム生産モデルの1変形として、全員が熱心に働くのが総利得最大化になるとは限らないケース(収穫逓減チーム生産モデル)の分析を続けた。この変形モデルでは当初のモデルと異なり、一連の協調可能命題が成り立つことを既に示しているが、本年度はチームのメンバーが2名のときにフォーク定理が成立する条件について、一般化に成功した。これら研究成果について、韓国・延世大学のミクロ経済学研究グループが主催した国際ワークショップで、報告・発信した。 また、多市場接触のカルテル促進効果という産業組織論の一論点への応用を念頭に、複数の不完全公的観測囚人のジレンマを同時に繰り返しプレーするという構造のモデルの分析を続けた。囚人のジレンマ数が1つ増えたときの最も協調的な均衡利得への影響について、詳細に評価した。また研究成果を、ヨーロッパで最高レベルのゲーム理論関連の国際学会で報告した。 2.最先端のフォーク定理が成立する環境における特定の均衡概念による明示解の導出に関連して、不完全私的観測下での多市場接触のカルテル促進効果について、計算科学的および経済学的角度からそれぞれ分析した。フォーク定理が想定するような複雑で特定困難な均衡分析を回避し、いわゆる信念不問均衡による分析を通じて、多市場接触のカルテル促進効果を私的観測下でも明らかにした。研究成果は計算科学界のトップ国際会議に採択され、抄録掲載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
繰り返しゲーム理論の多様な論点について、順調に研究成果を積み上げている。特に、私的観測下での多市場接触のカルテル促進効果に関する研究は、計算科学分野で最上位の査読付き国際会議に採択されて抄録への掲載が決定しており、インパクトの高い学際的研究となった。更に、収穫逓減チーム生産モデルにおけるフォーク定理の成立条件を一般化したことは、既存文献で指摘されてこなかった新タイプのフォーク定理に関する理解を深めることとなり、重要である。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの順調な進展を受けて、引き続き研究を進める。具体的には、収穫逓減チーム生産におけるフォーク定理の成否の更なる見極め(特にチームのメンバーが3人以上のケース)や、不完全公的観測下での多市場接触のカルテル促進効果に関連して、市場数がきわめて大きいときの極限定理の導出などの諸問題に取り組む。
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Causes of Carryover |
(理由) 令和元年度は、研究成果の発信のための国際会議参加や、研究プロジェクトの国際共同研究への発展を見据えた研究者招へいや研究会開催などの支出を予定していた。しかしこれら活動については、所属機関の運営費および民間からの研究助成を充当することもできたため、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 令和元年度から続けている研究成果発信のための国際会議参加や、研究者招へいと研究会開催を令和2年度も行う。また、研究を円滑に進展させるためのリサーチアシスタントの雇用や、科研費研究員の雇用についても計画する。
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