2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01507
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
関口 格 京都大学, 経済研究所, 教授 (20314461)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 繰り返しゲーム / 不完備情報 / カルテル / 不完全観測 / 観測オプション / フォーク定理 / 多市場接触 / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
明示解の導出可能性を基本軸として繰り返しゲームの理論を再構築し、「解けるモデル」と「解ける均衡概念」を提示するとともに、組織の経済学や産業組織論などの経済学的応用に繋げるという本研究の目的に照らして、以下のような研究成果を得た。 1.明示解が導出可能なモデルによる産業組織論の応用研究として、各企業が各期の期初にその期の市場に参加するために必要な費用を払うかどうかを選択し、また費用関数が自社の私的情報となる不完備情報の動学的寡占モデルで、総利潤最大化を達成するカルテル的均衡の構築およびその存在条件を明らかする研究を、前年度に引き続き行った。研究成果を、国際学会を含む複数の学会にて報告した。またこのモデルでは、ベンチマークというべき1回限りのゲームにおける均衡の構造について十分に明らかになっているとはいいがたく、この点についても考察を進めた。 2.研究代表者自身がこれまで推進してきた観測オプションのある繰り返しゲームの分析を、定番的な自動完全観測下ではフォーク定理が成立しない無限回繰り返しゲームのクラスに拡張する研究を、前年度に引き続き行った。観測がオプションとなることで初めて成立する均衡により、このクラスにおいてもフォーク定理が成立することについては前年度までに示しているが、フォーク定理の条件を更に弱めることに成功している。 3.最先端のフォーク定理が成立する環境における特定の均衡概念による明示解の導出に関連して、不完全私的観測下での多市場接触のカルテル促進効果について、引き続き分析した。この論点については、既に計算科学的に分析した成果が令和元年度の査読付き国際会議に採択された(抄録にて令和2年度に出版された)が、令和3年度は経済学的分析に注力した。重要な比較対象である不完全公的観測のケースと並列的に分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繰り返しゲーム理論の多様な論点について、着実に研究成果を積み上げている。特に、私的観測下での多市場接触のカルテル促進効果に関する研究は、計算科学分野で最上位の査読付き国際会議に採択されて抄録にて出版され、インパクトの高い学際的研究となった。更に、不完備情報下でのカルテルの成否という産業組織論の重要問題について、各期参加するのに費用がかかるという設定に拡張してカルテル的均衡の存在条件を明らかにした研究も、査読付き国際学会で採択されるなど、一定以上の評価を得ている。 しかしながら感染症問題のため、当初計画していた海外共同研究者との長期研究打ち合わせや、内外の学会報告における参加者との対面によるディスカッションや情報交換など、研究進行上の重要な活動について前年度に引き続き全て中止することとなった。これらのプラスマイナスを勘案すると、本研究はおおむね順調に進展していると評価するのが妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、対面形式の学会の再開が世界的潮流になっているように見受けられる。感染症の状況に注意するのは当然だが、令和4年度はこの流れに沿いつつ、令和2年度・3年度に中止するよりなかった対面による研究打ち合わせや学会報告等を可能な限り行う。また令和3年度に進展を見た各研究プロジェクトについては、学術論文として完成させて査読付き学術雑誌での掲載を目指す。また平成30年度から取り組んでいる、動学コーディネーションゲームの均衡利得の特徴付けに繰り返しゲーム理論の手法を援用する研究について、静学コーディネーションゲームとの比較という観点からの分析を完成させ、学術論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
令和3年度は令和2年度に引き続き感染症問題のため、当初計画していた海外共同研究者との長期研究打ち合わせや、内外の学会報告など、旅費を必要とする活動をほぼ全て中止することとなった。また、論文作成手伝いなどのために大学院生の雇用を計画したが、所属機関のリサーチアシスタント経費などの他経費を充当することができた。これらの事情により、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 感染症の全世界的な状況に注意しながらも、対面形式の学会の再開が世界的な潮流となるのを受けて、令和2年度・3年度に中止するよりなかった対面による研究打ち合わせや学会報告等を積極的に実施する。また研究を円滑に進展させるため、リサーチアシスタントとしての大学院生の雇用や、博士号を取得する若手研究者の科研費研究員としての雇用についても計画する。
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Research Products
(5 results)