2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01508
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石黒 真吾 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (60288496)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 組織の経済学 / 契約の経済理論 / ミクロ経済学 / 企業の経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度においては,企業組織の理論分析に関する研究を主に三つの方向で発展させることが出来た.第一に,多くの実証研究で指摘されている企業利潤の変動と整合的な企業動学モデルの構築に成功した.とくに,複数の生産要素への支払いへのコミットメントが困難な状況において,企業の経営資源の蓄積が時間を通じて変動することが明らかにされた.これにより,なぜ企業の経営スタイルが時間を通じて変化するのかが明らかにされた.本研究は,これまで高い評判を得ていた企業が企業不祥事に陥るなど,企業経営・組織がなぜ時間不変的な効率状態を維持できないのかという問題に対して理論的な回答を与えた研究として重要な意義があるものと判断される.本研究結果は学術論文としてまとめられ,国際的な学術雑誌へ投稿された(現在,審査中である).第二に,長期的取引関係を結ぶ経済主体が信用市場にアクセスできる可能性がある状況を想定して,貯蓄や借り入れが最適な取引契約に与える影響について理論的に分析を行った.経済主体が貯蓄や借り入れを通じて資産形成を行う状況では,資産蓄積を考慮した努力誘因をコントロールする必要が出てくる.しかしながら,従来の研究ではこれらの分析が十分になされていないため,その意味で本研究は新しい分析視角を導入することに成功したといえる.本研究の基礎的な部分は完成を見ており,2019年度に引き続きその拡張が試みられる予定である.第三に,組織構成員の成果が立証困難な状況において,いかに彼らに適切な努力誘因を与えるかに関する理論的研究を行った.本研究の成果は改訂を重ねたうえで学術論文としてまとめられ,投稿可能な段階にまで到達している.また,同研究結果は日本とドイツの契約理論研究者が集まる国際的な研究集会(2018年9月,大阪)において報告された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究の改訂に加えて,新規の研究プロジェクトとして新しいアイデアを二つほど発展させることが出来た.一つは企業の経営資本の蓄積がいかに時間を通じてに進展するかあるいは変動するかに関する理論研究であり,これはすでに学術論文として完成して学術雑誌に投稿された.現在は論文の審査中の段階にあり,2019年度中には審査結果が得られることが見込まれる.もう一つは長期的取引関係と信用市場との相互作用を捉える理論研究であり,こちらのアイデア部分はすでに完成しており,2019年度以降に継続して最終完成を見る見込みが高いと判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
上述したとおり,企業の経営資本の蓄積モデルに関する理論研究は,現在,国際的な学術雑誌に投稿中であり,2019年度にはその審査結果が判明するものと思われる.その結果を受けて論文の改訂に望みたい.また,長期的取引関係と信用市場との相互作用を考察する研究に関しては,完成した段階で国内外の研究集会等で報告を行う予定である.とくに,2019年度前半期において,シドニー工科大学やシドニー大学など海外の大学における研究集会で同研究成果を報告する予定である.その後の改訂を行いながら,国際的な学術雑誌へ投稿の予定である.また,組織構成員の成果が立証不可能な状況における最適な誘因設計に関する研究に関しては,すでに投稿段階にきているため,2019年度中には国際的な学術雑誌への投稿を実施することを予定している.
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Causes of Carryover |
2019年度において,海外の研究機関に一定期間滞在して集中的に研究を推進する必要性が生じたため,2018年度の当初予算を2019年度に旅費等で効果的にまとめて利用することとなった.具体的には,2019年度前半期においてシドニー工科大学(豪州)に滞在して,同大学および近隣の大学(シドニー大学など)における研究会等で2018年度に蓄積した研究成果を報告する予定となっている.また,これらの大学における関連分野研究者との情報交換や議論を通じてこれまでの研究を進めることを計画している.
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