2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K01508
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石黒 真吾 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (60288496)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 契約理論 / ゲーム理論 / ミクロ経済学 / 企業組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
客観的成果指標が利用困難な状況において経済主体に適切な行動誘因を与えるにはどのような組織構造が望ましいのかという問題意識のもと,経済主体が自発的に合意事項を履行する関係的契約のガナバンスについて理論的に考察した.これにより,企業組織,企業間取引,金融契約など,社会の様々な取引場面でみられる「暗黙的な取引慣行」(明示的契約によらない当事者間での自発的な約束の履行)の合理性についての理論的理解に貢献することが出来た. 本研究では,既存研究を次のように前進させた.第一に,これまでの研究は「一対一の雇用者・労働者関係」のような双務的関係の分析が中心であったのに対し,複数の経済主体間で暗黙の約束を合意・履行させなければならないより複雑な環境へ研究を発展させた.第二に,従来の研究では,取引主体は資産保有の機会を持たない(あるいは資産保有の積極的な理由がない)と仮定されており,時間を通じた長期的関係において取引主体が蓄積していく資産(負債)が暗黙的な契約履行に与える影響については明らかになっていない.本研究では,資産蓄積の過程を明示的に導入し,債務不履行の可能性が取引メカニズムの遂行に与える影響について理論的に取り組んだ. 具体的な研究成果は以下の通りである.第一に,企業の経営行動と企業価値に関する動学分析を行った論文 Management Cycles が国際的な査読付き雑誌Economic Theoryに掲載受理された(2020年12月).また,主観的評価や資産蓄積を考慮した関係的契約に関連する論文を,一橋大学経済研究所定例研究会(報告言語:英語,2020年11月),および国際的な研究集会(審査あり)14th Organizational Economics Workshop in Australia (hosted by UNSW)にて報告した(報告言語:英語,2020月10月).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,研究成果を海外の研究集会や国際学会等で報告すること,また,海外の関連研究者との意見交流を行うことを計画していたが,新型コロナの感染により海外渡航ができなくなり,こうした国際的な活動が著しく制約された.他方で,オンラインによる海外での研究会への参加や報告,海外研究者とのオンラインによる意見交換など,物理的移動の制約を乗り越える対処を駆使することで,それなりの研究成果を積むことが出来た.ただし,対面式でのコミュニケーションを通じた知的交流の便益が失われたため,当初予定していた研究計画が完全には遂行できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
世界的な感染の終息およびワクチンの普及に強く依存するが,海外渡航が可能な段階に入れば,当初の計画通り海外の研究機関への訪問,海外研究者との意見交流,研究集会での報告などを遂行する予定である.それが依然として難しい場合には,継続してオンラインで研究交流や研究報告を行うと共に,これまで蓄積した研究成果を査読付き国際雑誌に投稿・発表していきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
海外研究機関の研究者との意見交換及び研究報告等の海外出張を計画していたが,新型コロナ感染により海外渡航が不可能となり,研究計画の大部分の遂行が困難となった.そのため,次年度使用額が生じた.次年度においては,世界的な感染状況の終息と感染リスクを考えたうえで,当該年度までの研究計画を継続して遂行することを予定としている.
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