2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01508
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石黒 真吾 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (60288496)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 契約理論 / ゲーム理論 / ミクロ経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
立証可能な情報が制約されるために公的には契約が履行が出来ない状況において,長期的関係に基づく非公式な契約関係がどのように機能するのかという問題に理論的に取り組んだ.具体的な研究内容と成果は以下のとおりである.第一に,長期的取引関係にある経済主体が外部の金融市場にアクセスできるかどうかが,取引関係の効率性に重要な影響を与えることを明らかにした.この結果から,長期的関係にあるメーカーとサプライヤーの取引効率性は,単に企業の生産性という技術的構造だけではなく,サプライヤーの資産蓄積や金融構造にも依存しているという示唆が得られた.また,企業間信用の役割を合理的に説明する理論的基礎を与えることもできた.本研究の成果は,Australian Economic Theory Workshop (AETW)という国際的な研究集会にて報告された(2021年10月オンライン開催).第二に,なぜメーカー・サプライヤー関係はしばしば階層的な構造をもつのかという問題に対して,関係的契約の視点から理論的な基礎付けを行った.日本の自動車メーカーは,部品サプライヤーと長期的関係を構築していると同時に,階層的な取引ネットワークを構築していることが重要な特徴として議論されてきた.その合理性に関して,関係的契約へのコミットメントを容易にする機能に注目をして,下層のサプライヤーへの権限委譲をともなう階層的ネットワークはメーカーに権限が集中する集権的組織よりもすぐれていることを一定の条件の下で明らかにした.本研究の成果は,国内の研究集会にて報告された.第三に,客観的評価が難しい状況において適切な努力誘因を与えるにはどのような報酬設計を行うべきか,という問題に理論的に取り組み,CEO報酬で使用されるボーナス・プールの役割を明らかにした.本研究に基づく論文は,国際査読雑誌から改訂要求を受け,現在改訂中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際的な研究集会で報告を行い,参加者から肯定的なコメントを受けるなど,国際的な情報発信が出来た.また,最終的な採択にはまだ至っていないが,定評ある国際的な査読雑誌から改訂要求を受けることできたことで,今後の研究推進に大きな進展が得られた.また,海外の研究者との国際共同研究をおこなっている研究もあり,国際的な研究ネットワークを維持継続することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究の進捗状況を踏まえて,その成果を国際的な研究集会や国際学会で報告することを計画している.すでにその一部は報告が採択されており,国際的な場面での研究のアピールに繋げることが期待できる.また,国際的な査読雑誌から受けている改訂要求を採択に結びつけるべく,進行中の論文改訂を完遂したいと考えている.さらに,これまで継続している国際共同研究を今後も進めていきたいと考えている.
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大による影響を受けて,当初計画していた海外研究機関における研究報告や研究交流の遂行が困難になったこと,および国内の研究会や学会がオンライン開催になったことが次年度使用額が生じた理由である.
|