2022 Fiscal Year Research-status Report
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18K01508
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石黒 真吾 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (60288496)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 契約理論 / ゲーム理論 / ミクロ経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
立証可能な情報が制約された環境における望ましい報酬体系の設計や意思決定権限の配分に関する理論研究を推し進めた. 第一に,複数の決定権限を組織の中央に集中させる集権的な仕組みと権限を垂直的に委譲する階層型の仕組みのどちらが組織の効率性に貢献するかを分析した.取引主体の関係が長期間に及ぶ場合には,階層構造の組織がより望ましいことが示された.この理論的結果を用いて,日本の自動車産業における階層分権的なサプライヤー・システムと集権的なアメリカ型のサプライヤー・システムとの比較を行い,その比較効率性を議論するための含意を導出した.同研究は,国際研究集会や国際学会において報告された.詳細は以下の通り:(1) Australasia Meeting of the Econometric Society (July 6-8), (2) 8th Workshop on Relational Contracts (Aug 5-6), (3) Asia Meeting of the Econometric Society, East and South East Asia, Tokyo, Japan (Aug 8-10). 第二に,客観的な業績指標が欠如した環境においていかに望ましい行動を組織メンバーから引き出すかという問題を考察した.客観的な業績に基づく報酬が提示出来ない場合には,複数のメンバーを束ねて報酬総額を固定した仕組み(「ボーナス・プール」)を駆使することで,組織として効率的な成果を達成できることを明らかにした.同研究成果は,経済理論系の国際査読雑誌として高い評価を受けているJournal of Economic Theoryから改訂要求を受けて最終的に受理された(2023年2月).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最新の研究結果を複数の国際研究集会や国際学会で報告を行い,専門家との議論に参加することが出来た.また,これまで継続していた研究成果が定評のある国際学術雑誌から掲載を採択された.
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Strategy for Future Research Activity |
階層組織と長期的関係に関するこれまでの研究内容をさらに発展させて,国際学術雑誌への掲載までたどり着くことを第一の目標とする.加えて,新規の研究内容に着手して,国内外の研究集会や学会で報告する機会を得ることを目的とする.具体的には,動学的な契約設計と資産蓄積に関する新しい知見を発展させて論文を完成させ,国際学術雑誌への投稿まで進めたいと計画している.
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により,当初予定されていた国際研究集会および国際学会の一部あるいはすべてがオンライン開催になったこと,さらには依然として海外渡航の制約(ワクチン証明やPCR検査等)が残っていたことを受けて,国内外の出張が困難となった.2023年度は,多くの研究会や学会が対面開催に戻ることが予想されるため,研究成果を報告するための旅費等への支出として研究費を活用したい.加えて,投稿用論文の英文校正および投稿料として使用を計画している.
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