2018 Fiscal Year Research-status Report
Evolution of strategic information transmission in networks and mechanism design
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18K01510
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
天谷 研一 香川大学, 経済学部, 准教授 (80379461)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 戦略的情報伝達 / 進化ゲーム理論 / コーディネーション |
Outline of Annual Research Achievements |
企業組織や社会制度を設計する上で、「人々が持っている情報をいかにして収集するか」「誰が誰にどのような情報を伝えるか」というのは重要な問題である。しかし、情報の流れは、制度設計者がすべてコントロールできるものではない。組織の設計においても、構成メンバーによる自然発生的な情報の流れを勘案しながら、設計者の手の届く範囲においてコントロールすることが不可欠である。自然発生的な情報の流れでは、「人気ブロガー」のように、ハブの役割を果たすプレイヤーが生まれることがある。すなわちネットワークの形状が重要になる。本研究では、ネットワークの進化を織り込んだ上での、情報伝達メカニズムの設計について考察する。 本年度は、進化ゲーム理論の手法を用いて、プレイヤーが場所の選択により誰と接触するかを決定することを通じて、自らの意図を間接的に伝達するメカニズムを考察した。本研究のモデルでは、パレート効率的な均衡と非効率な均衡の2つのナッシュ均衡が存在するゲームをプレイヤーの集団がランダムマッチングでプレーする。ゲームに先立ち、各プレイヤーは自分がプレーする場所を選択し、同じ場所を選択したプレイヤーとの間でマッチングが形成される。各プレイヤーの戦略は進化ダイナミクスに従って変化する。場所の選択の調整スピードが行動の選択の調整スピードより十分速い状況では、ゲームが「自己シグナリング条件」を満たす場合、またその場合に限り、パレート効率的な均衡が選択されることが証明された。 本研究では、場所の選択というネットワーク形成に関わる意思決定と、ゲームにおける行動に関わる意思決定がどのように相互に関係しあうかについて、一つの特徴を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、期間全体を通じて、社会や組織のメンバー間の自発的な情報の流れがどのように生成されるかを、情報伝達ネットワークの進化という点に焦点をあてて解明することを目的としている。分析手法としては、Crawford and Sobelらによる戦略的情報伝達の理論と、Jackson らによる戦略的なネットワーク形成の理論を統合する。与えられたネットワークでどのような情報伝達がなされるかを戦略的情報伝達の理論を用いて精密に解明した上で、そこで得られるプレイヤーの利得から、ネットワーク形成の理論を用いてネットワークの進化を考察する。次に、上記の分析に得られた結果をもとに、メカニズムデザインの理論および進化ゲーム理論の手法を用いて、組織や社会にとって最適な制度がいかなるものであるかを理論的に解明する。 これまでの研究で、場所の選択というネットワーク形成に関わる意思決定と、ゲームにおける行動に関わる意思決定がどのように相互に関係しあうかについて、一つの特徴を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、これまでの研究成果を発展させることによって、社会や組織のメンバー間の自発的な情報の流れがどのように生成されるかを、情報伝達ネットワークの進化という点に焦点をあてて解明する。分析手法としては、Crawford and Sobelらによる戦略的情報伝達の理論と、Jackson らによる戦略的なネットワーク形成の理論を統合する。与えられたネットワークでどのような情報伝達がなされるかを戦略的情報伝達の理論を用いて精密に解明した上で、そこで得られるプレイヤーの利得から、ネットワーク形成の理論を用いてネットワークの進化を考察する。 今後の研究においては、情報伝達の問題に特有と考えられる以下の要素を、ネットワーク形成の理論に組み入れて分析する。 (1)プレイヤーは、自分が受け取った情報をそのまま伝えるとは限らない。意図的に情報を歪めるインセンティブを持つ可能性がある。(2)情報仲介者により情報が歪められるため、単一の情報でも複数のルートを経由して得たほうが情報の精度を増すことができる。(3)プレイヤーは、より多くの情報を持つ人とコンタクトを持とうとする。このため、正のネットワーク外部性が生じる。(4)一方で、一人のプレイヤーが多くのプレイヤーと接触すると、特定のプレイヤーとの固有の関係に対して投入する資源は減る。このため、負の外部性が生じる。(5)プレイヤーは、優れた情報仲介者としての名声・評判を構築しようとする。(6)プレイヤーは同質ではなく、組織内における立場、与えられた賃金体系等、組織設計の中で内生的に生成される異質性が存在する。
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせおよび意見聴取のため、先方の所属機関を訪問して面会する旅費支出を計画していたが、学会・研究会に出席する機会に合わせて面会することができたために、先方を訪問する必要がなくなったことがあったので、当初の計画より旅費支出が少なくなった。次年度使用額は、研究打ち合わせおよび意見聴取のための旅費として支出する計画である。
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Research Products
(1 results)