2018 Fiscal Year Research-status Report
遠隔地相互作用実験を実現する経済実験システムの開発
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18K01517
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
林 良平 東海大学, 政治経済学部, 講師 (80633544)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経済実験 / 多言語化 / 永続化 / スケーラビリティ / 遠隔地実験 / 相互作用実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、1,000人同時時参加も可能なオンライン経済実験システムを開発し、遠隔地相互作用実験を実現することを目的とする。そのために本年度は、実験システムの多言語化、永続化、スケーラビリティの確保の3点について取り組んだ。 実験システムの多言語化は、英語、日本語、その他の言語について、システムとは別の外部ファイルとして言語ファイルを保持することで実現した。これにより、すべての実験で実験中であっても被験者の操作で自由に言語を変更して実験することができるようになった。 永続化は、実験システムを運用するサーバーが再起動するなどした際に、メモリ上に保持されていた実験ログがすべて消えてしまう問題に対応するものである。これまでの実験システムでは、1日に1回システムが再起動することで、過去の実験が消える仕組みになっていた。しかし、遠隔地で数日にわたって行われる実験(たとえばアンケート実験など)では、過去のログが消えてしまうことはデータの欠損につながるため、望ましくなかった。そこで、サーバーの再起動前にメモリ上のデータをファイルに書き出し、再起動後にファイルからログを読み込むシステムを構築し、解決した。 スケーラビリティの確保は、サーバーをクラウド上で管理しているため、費用を削減する目的で開発されている。同時に実験する被験者が増加したり、実験自体が増加した場合に、サーバーの性能を自由に増減できる必要がある。実験が行われていない場合や、少ない場合には最低限の性能にすることで運用費を抑え、逆に実験が大量に行われている場合は必要なメモリ量、CPUを確保することで実験実施に支障がないようにしている。スケーラビリティの確保は開発中であり、平成31年度も継続して開発される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では平成30年度に実験システムの設計を行う予定であった。これには報酬計算、随時参入・退出、リアルタイム設定編集、バックアップ機能を追加する内容が含まれていた。 しかし、要求を満たすためにはシステムのコアを根本から設計し直す必要があるとの結論に至り、バックアップ機能を優先的に開発し、他の機能の開発は保留している。平成31年度の多言語化をコア開発と同時に進めているため、平成30年度と31年度の作業内容が混在して進められている。そのことを加味して考えても全体として「やや遅れている」印象を持つ。 研究の進行が遅れている理由は、コア開発が技術的に複雑であることと、それに伴う学習コストが増大していることが挙げられる。 安定して高速に動作するシステムを構築するためには、シンプルな機能を組み合わせて用いることが基本であるが、用途の自由度を高めようとすると複雑な機能を用いなければならなくなる。その弊害は、不安定な動作や、検証・拡張の困難さ、速度の低下などがある。そこで、1つの複雑な機能を複数のシンプルな機能で置き換える工夫をしているが、その結果システム構成が一段と複雑になっている。 本研究のプログラミング実装は実験補助者らの協力によって行われているが、前述のとおり実験システムのコア開発が複雑になるにつれて必要な技術水準も上昇し、学習コストが増大している。高度なプログラミング知識を要求する一方で、大学規程により能力に対して割安な金額の謝金を支払えない状況にあるため、実験補助者からの協力を得にくくなっている。しかし、企業にプログラミング費用の見積もり依頼をしたところ、依頼をかけた5社中4社で技術的に対応できないとの回答があり、1社は年間研究費を超える高額な見積もりであった。したがって、今後も実験補助者の善意の協力に頼らざるを得ない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度にはスケーラビリティの確保を継続して開発し、実験システムのコアの開発を完了させる予定である。その後、多言語化、報酬計算、随時参加・退出、リアルタイム設定編集など、実験にかかわる個別の機能を追加していく。同時にこれまでの成果をまとめて国際学会等で発表していく。 令和2年度には実験実施者に向けた実験実施マニュアルやオリジナル実験を実施したい開発者向けの実験作成マニュアルを整備していく。また、個別の実験についても、ダブルオークション、公共財の自発的供給メカニズム、共有地の悲劇、美人投票などについて、研究用途に耐えられる質の実験を実装していく。同時に国際学術誌に投稿していく。 令和3年度からは、実験を電源のない場所でも実施できるハードウェアの開発を行う。そして、令和4年度に研究の総括と、学術誌投稿のリバイズ期間とする。
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Causes of Carryover |
詳細な実験ログを分析するにあたって、大規模パネルデータをロジスティック回帰分析する必要が生じた。購入済みの統計処理ソフト(STATA 15/MP 4 Core)では並列分散処理能力が十分ではなく、有限時間内に統計解析ができないことが分かった。そこで、より並列分散処理能力に長ける64 Coreで処理できるようにライセンスをアップグレードする必要がある。 本研究課題の後年度に行う予定であった動作検証を前倒しして実施することで、システム設計を改良することができ、後年度の研究を容易にすることから、前倒し請求をすることでより円滑に研究課題が遂行できる。
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