2021 Fiscal Year Research-status Report
遠隔地相互作用実験を実現する経済実験システムの開発
Project/Area Number |
18K01517
|
Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
林 良平 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 講師 (80633544)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 経済実験 / 多言語化 / マニュアル / オンライン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1,000人同時参加も可能なオンライン経済実験システムを開発し、遠隔地相互作用実験を実現することを目的とする。この実験システムが実現することで、経済学に新しい研究方法を提供し、文化が混在する社会の動学的研究という新しい分野を開拓する基盤となる。 令和3年度は、実験制作マニュアルの整備、システムとマニュアルの更新をする計画であった。すでに令和2年度から雑誌「経済セミナー」上で経済実験やXEE上での実施方法を紹介しており、引き続き連載を行った。また、システムのマニュアルを整備し、日本語、英語、スペイン語で利用方法を読めるようにした。各実験についても、日本語、英語、スペイン語で実施できるようにシステムを改良した。 令和2年度から取り組んでいたシステムの安定化と高速化については、システムと各実験の両方において対応し、研究目的である1,000人同時実験時も安定して動作するように改善された。また、システムが正常に動作しているかどうかを機械的に確認するプログラムを充実させた。 他大学の教員の協力を得て、授業で実験を実施し、400名を超える受講者が一斉に実験に参加しても不具合なく動作することが確認された。また、表示の不具合等が発見された場合には、その都度修正を加えるなどして対応した。 令和3年度までの実績で、本研究課題の目的はおおむね達成したため、令和4年度ではシステムの改善、マニュアルの改訂を進めながら、研究成果をまとめて国際学術雑誌に投稿する計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り進行していることから、「おおむね順調に進展している」とした。 令和元年度に致命的な不具合が報告された。その内容は、50名以上で実験を実施するとサーバーの処理処理が間に合わず遅延が発生したり、サーバーが応答しなくなるというものである。その後、令和2年度に原因を究明したところ、サーバーから被験者にメッセージを送る機能に問題があることが判明した。そこで、令和2年度には不要なメッセージを送信しないようにする、メッセージの文量を減少させる、メッセージ送信の負荷を減少させるの3点に取り組み、劇的に処理負荷を減少させた。その一方で、実験プログラムの記述方法が大幅に変更され、既存の実験も一部改修する必要が生じた。 そこで令和3年度には新しいシステムに対応した記述方法で実験を書き直し、それらの安定性をテストした。コンピュータによって機械的にアタックさせた負荷テストでは、1,000人を想定した実験であっても遅延なく動作することが確認された。 実験プログラムの作成方法が確立したことで、今後は格段に速やかに実験が作成できると見込まれる。また、被験者のグループ分けや、説明、実験、結果の各ページの表示、ログファイルの書き出し等についても多くの経験が蓄積されたため、実験経済学で頻繁に実施される実験については技術的に網羅できる見通しが立った。 技術的な困難が解決され、当初の主要な目的を達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究・開発の成果を国際学術誌に投稿していく。 本研究課題で開発したXEEシステムは、相互作用を伴う実験を遠隔地で実施できる特徴がある。同じ特徴を持つ実験システムにはoTreeがあり、経済学者になじみのあるPythonというプログラミング言語で書かれていることから、年々利用者が増加している。XEEシステムのoTreeに対する優位性を主張するためには、プログラミングに詳しくない経済学者にも理解できる表現で特徴を説明しなければならない。そこで、まずはディスカッション・ペーパーに成果をまとめて、内外の研究者の意見を募った後、国際学術誌に投稿したい。 システムやゲームのプログラムの品質を高め、より安定して動作させるため、クライアント側(ブラウザ側のJavascript)、サーバー側(Elixir)、ハードウェアのそれぞれにおいて、テストを重ねていく予定である。 実験マニュアルについては、雑誌「経済セミナー」の連載を書きなおした形で書籍化する話が進んでおり、より広範な潜在的利用者に、より簡易に実験を実施してもらえるように解説を充実させていきたい。
|
Causes of Carryover |
投稿論文用の英文校正を計画していたが、令和3年度はシステムの不具合改修に費やされたため、計画を変更して次年度に実施することとしたため、未使用額が生じた。
|