2018 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical Analysis on Intergenerational Equity and Optimal Economic Growth without Discount Factors
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18K01518
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐柄 信純 法政大学, 経済学部, 教授 (90286005)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 再帰的効用 / 非凸生産技術 / 最適経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
稀少な資源を効率的に配分する問題の研究は経済学の伝統的な課題である。最適経済成長論では効率性を満たす異時点間の資源配分については、現在まで盛んに研究されてきたが、【世代間衡平性】を満たす異時点間の資源配分については、十分に考察されてきたとは言い難い。すべての世代を同等に処遇するためには、将来世代の効用を割り引かないことが要求されるため、将来世代の効用を割り引く伝統的な社会的厚生関数を分析に用いることができないのが、その理由である。本研究では割引因子を伴わない社会的厚生関数に依拠した無限期間の効用最大化基準を採用し、最適経済成長モデルにおいて最適経路の双対価格による特徴付けを行い、【パレート効率性】と【世代間衡平性】を同時に満たす経路の動学的性質を分析する。割引因子の影響をモデルから完全に取り除くことにより、新古典派の標準的仮定を満たさない非凸選好と資本ストック水準に応じて規模に関する収穫逓減および収穫逓増が併存する生産技術の下では、【貧困と富裕の階層分離】が時間選好率以外の要因で生じることを示す。 上記の問題意識の下、平成30年度は非凸選好と非凸生産技術を伴う異時点間の意思決定問題において、【パレート効率性】を満たす経路の存在を非凸環境で分析した。非凹な再帰的効用関数を許容することは、消費の平準化効果が必ずしも働かないことを意味し、非凹な生産関数を許容することは、資本ストック水準に応じて規模に関する収穫逓減と収穫逓増が併存することを意味する。すなわち、経済活動の水準に依存して経済主体の消費リスクへの態度が異なったり、生産技術の構造が変化する状況を通して、経済主体の最適化行動の結果、複数の定常状態が出現し得る状況を扱う際の雛形モデルを提示した。この研究は英文論文にまとめられ、海外のジャーナルに公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不測の事態を来すことなく、当初の予定通りに研究を進め、平成30年度にさらに2本の学術論文が国際ジャーナルに掲載が決まり、近刊予定である。研究成果の公表という観点からは、計画通りに成果を挙げることができたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究課題をさらに発展させるために、新たな共同研究者を招き、市場メカニズムによる資源配分の特徴付けを異時点間意思決定の観点から分析を進めたい。この目的を実現するために、最適制御理論の専門家と共同研究を進める予定である。また、市場メカニズムによる衡平な資源配分を実現する方法を考察するため、非同質的分割可能財が存在する交換経済を一般的な枠組みで定式化した上でパレート効率的無羨望配分をWalras均衡として実現できることを示す。この問題を動学的枠組みに拡張し、世代間衡平性の本格的分析を行うための予備的考察を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究費の前倒し支払請求を行い、本年度中に使い切れなかった分を次年度に持ち越した。未使用額は少額であるため、次年度の予算で滞りなく支出できる見通しである。
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