2019 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Analysis of John R. Commons's Institutional Economics and Newly Discovered Manuscripts Written in 1928-29
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18K01530
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宇仁 宏幸 京都大学, 経済学研究科, 教授 (90268243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 明義 専修大学, 経済学部, 教授 (90202085)
中原 隆幸 阪南大学, 経済学部, 教授 (70264744)
高橋 真悟 東京交通短期大学, 運輸科, 教授 (60726206)
北川 亘太 関西大学, 経済学部, 准教授 (20759922)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 制度経済学 / J. R. コモンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
J.R.コモンズの主著1934年『制度経済学』と、最近アメリカで新発見された、その1928-29年草稿とを比較することを通じて、彼の理論形成プロセスを明らかにすることが、本研究の目的であるが、本年度は次のような成果があった。 1. 研究代表者と分担者が、本年度の研究の成果を学会報告や研究論文としてまとめ、2019年7月のフランス政治経済学会、2019年10月の経済理論学会、2020年1月のアメリカ進化経済学会などにおいて発表したり、学術誌において公表した。学会に参加した国内外の制度派経済学研究者たちと有益な議論を行うことができた。 本研究で設定した3つの課題に分けて、主要な実績を挙げると、次のようになる。 ① 貨幣・金融論の形成プロセスの研究: 坂口の『社会科学年報』論文と中原の『経済論叢』論文。② 所得分配・再分配論の形成プロセスの研究: 高橋のアメリカ進化経済学会での報告と宇仁の『季刊経済理論』論文および共編著書『制度でわかる世界の経済』所収の論文。③ 経済民主主義論の形成プロセスの研究: 北川のアメリカ進化経済学会での研究報告と宇仁の本共同研究の研究会での報告。 2. 2019年3月の進化経済学会におけるコモンズ制度経済学に関するセッションでの研究報告を、英語論文として公刊する計画が進捗した。アメリカ進化経済学会誌であるJournal of Economic Issuesにおける特集として掲載する企画が同誌編集委員会で承認され、投稿したほぼすべての論文がレフェリー・プロセスを通過した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、本研究で設定した3つの課題に関して、次のような進捗があった。 ① 貨幣・金融論の形成プロセスの研究: 坂口は、論文「J. R. コモンズの貨幣制度説とその射程」において、コモンズの貨幣制度説の理論的な構造を明らかにし、それを現代の貨幣制度説であるB. テレ理論と比較することによって、コモンズの理論の現代的意義を明らかにした。また中原も、論文「主権、債務、制度としての貨幣」においてコモンズの貨幣論と、いくつかの現代制度派の貨幣理論との比較を行い、共通性とコモンズの独自性を明らかにした。 ② 所得分配・再分配論の形成プロセスの研究: コモンズは「利潤シェア論」(過少消費説に当たる)を批判し、「利潤マージン説」(利潤圧縮説)を主張した。この主張は、主に景気循環の動因をめぐって展開されている。高橋はアメリカ進化経済学会での研究報告においてコモンズの景気循環論の諸特徴を明らかにした。また、「利潤マージン説」を裏付ける事実としては、将来の収益性予想(コモンズは「将来性」とよぶ)にもとづいて投資が行われるという事実が挙げられる。つまり企業は様々な決定を行うが、投資の決定は将来の予想に基づいて行われるので、時間的にみれば、最も先行する。宇仁が2019年度に公表した諸論文では、この事実を企業の財務データというミクロデータのパネルデータ分析によって実証した。 ③ 経済民主主義論の形成プロセスの研究: 北川はアメリカ進化経済学会での研究報告において、「集団的民主主義」という考え方に到達するまでの、コモンズの思索の歩みを明らかにした。また、宇仁は、1928-29年草稿と『制度経済学』との功利主義批判(とくにシジウィックに対する評価)の部分を比較することによって、公的目的に関する合意を形成するための実践的方法に関する、コモンズの理論形成プロセスをある程度解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、上記の3つの課題についても引き続き研究を深めていくとともに、最終年度に当たるので、研究成果をある程度まとまった形で公表したいと考えている。 具体的には、上記のアメリカ進化経済学会の学術誌Journal of Economic Issuesにおけるコモンズ特集の実現をめざしたい。また、2021年3月の日本の進化経済学会の大会において、本研究の最終的成果を報告するセッションを企画したい。
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Causes of Carryover |
(理由) 2020年3月に東北大学で開催予定であった進化経済学会大会に参加するための旅費として支出予定であったが、新型コロナウイルス問題により、大会が5月に延期され、またWeb会議のかたちで開催されることになったため。 (使用計画) 2021年3月に開催される予定の進化経済学会大会に参加するための旅費として支出する予定である。
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Research Products
(9 results)