2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01538
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大久保 正勝 筑波大学, システム情報系, 准教授 (30334600)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | モデル不確実性 / 景気循環のコスト |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度(平成30年度)までに、モデル不確実性を考慮した景気循環の厚生費用が解析的に計算可能であること、及びその標準誤差の計算方法を確認した。前年度の実施状況報告書で述べたとおり、とりわけこの解析的計算方法は、ある効用関数のクラスのもとで、外生的に与えられる消費過程がランダムウォーク、トレンド定常、長期リスクモデル(固有リスクを持つランダムウォーク)に従う場合に適用可能であることを示した。今年度(令和元年度)は、以上の結果を精査した上で、2種類の国際データに応用することで、モデル不確実性を考慮した場合の景気循環の厚生費用を計算し、国際比較を行った。具体的には、大きく分けて3つのことを行った。第1に、国際通貨基金(IMF)のInternational Financial Statisticsを主なソースとした四半期データを用いて、G7を含む先進11カ国を対象に景気循環の厚生費用を計算した。第2に、世界銀行のWorld Development Indicatorsから作成した年次データを用いて、発展途上国と新興国を含む22カ国を対象に景気循環の厚生費用を計算した。以上の対象国の選択は先行研究に従い、22カ国には四半期データで対象とした11カ国が含まれる。分析結果から、モデル不確実性を考慮した場合の景気循環のコストは、従来知られていたものよりも大きく、多くの国でモデル不確実性を取り除くことのゲインは大きいこと、また、発展途上国と新興国において、この傾向が強いことが明らかになった。第3に、この結果の解釈を検討するために、発展途上国と新興国の景気循環に関する文献の調査を行った。以上の成果を論文にまとめ、英文査読雑誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、前年度までに作成したデータセットをもとに実証分析を行い、研究成果を論文にまとめた。また、得られた結果を踏まえ、新たに対象国を広げて分析を行う準備を進めた。以上より、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに行った実証結果に対するコメントを参考に、論文の改訂作業を進める。並行して、分析対象国を広げた分析を実施する。また、引き続き、分析手法の精査、文献調査を行い、他の研究者のアドバイスなどを取り入れながら、研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由は、当初予定していたよりも、出張旅費と人件費が少額で済んだことによる。現時点では、新型コロナウイルス感染症の影響により、学会や研究セミナー等が通常どおり開催されるか定かではないが、次年度使用額は主に出張旅費と人件費に充てる予定である。
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