2018 Fiscal Year Research-status Report
Statistical Sequential Analysis of Non-stationary Time Series using Stopping Times Based on Information
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18K01543
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
永井 圭二 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50311866)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オンラインモニタリング / 経済・金融時系列 / 停止時刻 / フィッシャー情報量 / ブラウン運動 / 汎関数中心極限定理 / 時間変更 / ベッセル過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
ITの技術の進展に従って,一般家庭でも,インターネットを通じて,膨大かつ詳細なビッグデータが時間を置かず手にはいることができる.この状況を考えると,直接的な費用もしくは機会費用を避けるために、できるだけ早いうちに,手元の情報(データ)を使って現在の経済・金融市場の状態を判別し,意思決定を行うことが非常に重要であると考えられる. 研究代表者は,時系列モデルについて統計的逐次解析の研究を行ってきた.統計的逐次解析では,経済・金融時系列といったデータがオンラインで観測されることを想定し,サンプルサイズはモデルの状態によりランダムな停止時刻で定まり,その停止時刻で統計的推定,検定,予測などを行う.通常の統計的解析と違って,意思決定を行う時刻がランダムであるため,その停止時刻で評価される統計量を解析する 時系列モデルでは,データが時間の経過とともに観測され,データの間に時間的な従属性を想定する.オンラインでデータの観測が進んでいく間,モデルにより情報量の蓄積の度合いが異なることが本研究の着目点である.統計的逐次解析では,データが逐次的に観測されるオンラインの状況を考え,充分な情報量が蓄積した時点(停止時刻)で統計的推論を行う. 2018年度の研究では,p階の自己回帰過程に対し,観測されたフィシャー情報量によって定義する停止時刻を用いて,統計的逐次解析の理論構築を行った.具体的には, ①定常なp階の自己回帰過程についての統計的逐次推定,②p階の自己回帰過程の局所対立仮説に関する逐次単位根検定, の2つの理論を構築した.停止時刻での統計量に対し,従来の統計的逐次手法は更新定理を用いて解析してきた.本研究では,ブラウン運動への収束する汎関数中心極限定理を用いて,停止時刻および逐次統計量を解析する手法を提案し、非定常時系列に対する単位根検定では時間変更とベッセル過程で解析できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
定常なAR(p)モデルの統計的逐次推定については,1階の自己回帰過程の統計的逐次推定のLai and Siegmundで得られた停止時刻の概収束の結果がある.本研究では,p階の自己回帰過程で定常エルゴード過程についての汎関数中心極限定理を用いて,停止時刻の漸近正規性を導いた. 定常もしくは非定常なp階の自己回帰過程について, 逐次的解析手法を用いて,自己回帰係数と停止時の同時分布を導いた. 特に,定常な場合は誤差分散を推定して定義した停止時刻と,誤差分散が既知として定義した停止時刻に関し,前者の停止時刻の分散のほうが小さいという非常に興味深い現象を発見した. また、単位根を持つp階の自己回帰過程について,停止時刻は単位根帰無仮説が真であるとき,漸近的に次元3/2のベッセル過程で表され,局所対立仮説が真のとき,次元3/2のドリフト付きベッセル過程で表されることを示した.また,単位根帰無仮説の下での停止時刻の極限分布の解析的表現を求めて,停止時刻の分布を使った逐次検定の方法も提案した.それは,和分次数の同定にも用いられることを突き止めた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.時系列モデルへ逐次分析手法を適用する.現段階では,AR(p)モデルについての理論は大体完成している.AR(p)モデル以外, MA, ARMA, ARIMA, ARFIMAといった様々な時系列モデルについて研究の経緯で記した解析手法が適用できることが考えられる. 特に金融時系列モデルとして,最も関心が高いARCH, GARCHなどの非線形時系列モデルにおいても当分析手法が適用できると考えられ,それらのモデルの研究を行う予定である. 2.変化点の問題について研究する.膨大な経済・金融などのデータが秒単位でオンライン観測されている現状を考えると,未知の変化の変化点の早期探索,モデルの早期探知が重要な課題になっている. 3.多変量時系列への応用を考える.例えば,多国間の株価指数,国債市場や為替レートといった国際的な連動性が高い金融時系列について,統計的逐次解析の手法を適用することを考える.非効率的な国際資本移動に伴う機会損失は,世界経済の変動リスクを高め,金融危機をもたらす原因の一つとなる.停止時刻を用いる統計的逐次解析的手法はこの機会損失を減少させることに効果があると考えられる. 4.異なる停止時を使って, 研究手法で記した統計的逐次解析の手法を用いて分析する.例えば,参考文献 [3] にあるように,経済学的意思決定にも使われる損失関数で定義した停止時の統計的性質について研究する予定である.
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Causes of Carryover |
国外発注した書籍が年度内に届かなかった。翌年度には必ず届くのでこの書籍に使用するつもり。
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