2019 Fiscal Year Research-status Report
Statistical Sequential Analysis of Non-stationary Time Series using Stopping Times Based on Information
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18K01543
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
永井 圭二 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50311866)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 逐次解析 / 単位根検定 / 停止時刻 / Bessel過程 / Bessel bridge / 結合密度関数 / 結合ラプラス変換 / 時間変更 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己回帰過程の単位根の逐次検定についての研究を行った。2019年08月に Kuala Lumpurで行われた世界最大の統計学関連の国際会議 The 62nd ISI World Statistics Congress(主催:International Statistical Institute)において2つの研究発表を行った。また、2019年09月に滋賀大学で行われた統計関連学会連合大会(主催:日本統計学会等6学会)においても2つの研究発表を行った。加えて2020年01月に一橋大学でおこなわれた関西計量経済学研究会(主催:関西計量経済学研究会)において2つの研究発表をおこなった。それらで発表した内容は以下のとおりである。 まず、フィッシャー情報を用いた停止時刻をもちいてDF検定統計量(逐次検定統計量)を評価するという方法に加えて、停止時そのものを単位根検定統計量とする方法を提案した。これは、非常に早く止まるという特徴があり、パワーは低いものの早期のアラートを発するという点で有用である。また、逐次検定統計量のオーバーサンプリングを回避するため、停止時刻の帰無における右側2.5%分位点を上限として、刈込停止時刻を使って逐次検定統計量を構成する方法を提案した。それらの新しい検定方法の動作特性を計算するために、逐次検定統計量と停止時の結合密度関数と結合ラプラス変換をBessel過程とBessel Bridgeの時間変更によりもとめた。これらにより、パワーと結合モーメントが特殊関数によって求められる。つづいて、非逐次のDF検定のパワーを正規分布から求める簡単で正確な方法を発見した。また、和分過程の次数の逐次探索とp次の自己回帰過程の単位根逐次検定についても研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、注目すべき点として、通常のDF検定のパワーが正規分布から実用上簡単に求められることを、逐次単位根検定との関連から発見した。もっとも広く使われている単位根検定DFのt検定と係数統計量検定に関して、自己回帰係数が1に近いときのパワーが非常に簡単に求められるということを発見したという点で極めて評価が高いと考えられる。 次に、刈込停止時刻(truncated stopping time)を用いた手法を提案した。純粋な逐次的な手法はオーバーサンプリングしてしまうことが多い。逐次単位根検定もそのような性質がある。そこで停止時刻に上限を設け、刈込を行うことでその欠点をおぎなった。そのときの検定のパワーの下落は驚くほど少なく、十分な実用性があることを示した。 つぎに、Bessel Bridgeにたいして時間変更を利用した逐次検定統計量と停止時刻の結合密度関数と結合ラプラス変換をもとめた。まず、Bessel Bridgeに逐次検定統計量と停止時刻の結合密度関数を求めたのであるが、それにより刈込停止時刻を使う検定方法のサイズを適切に計算できるようになった。つぎに、逐次検定統計量と停止時刻の結合ラプラス変換を求めることに成功した。結合密度関数はモーメントを計算するには非常に摂動が激しく、結合モーメント、特に共分散の計算には不適切であるが、結合ラプラス変換をもとめることで、この問題を解決した。これは数学的にあたらしい結果であると考えられる。 また、単位根検定とウイルス感染の基本モデルである分枝過程の臨界性検定(基本再生産性が1未満か、1以上かを検定すること)が同等な解法を有することに着目し、ウイルス感染に関しての逐次臨界性検定に適用する取り組みをはじめた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、逐次単位根検定の手法を、感染症疫学で重要な役割をはたす分枝過程(Branching Process)に対して適用し、停止時刻をもちいた統計的検定を研究する。 感染データについてもビッグデータの観測がオンラインで行われる今日、様々な情報量を用いて、早期意思決定が可能となっている。この研究では、分枝過程に対しフィッシャー情報量(Fisher information)に基づいた停止時刻を用い、充分な情報が蓄積された時点で意思決定を行う手法を開発する。特に、基本再生産数(一人の感染者が新たに生み出す感染者の期待値)が1以上か、1未満かの検定に関して停止時刻を用いる統計的逐次検定の研究を行う。この研究は、経済時系列の単位根の逐次検定で、われわれは2019年8月にクアラルンプールで行われた統計学分野における世界最大のコンファレンス62nd ISI World Statistics Congress で単位根の逐次検定に対して新しい数理統計学的手法を提唱したことがきっかけとなている。その後、コロナウイルスの問題が生じた時点から集中的な研究をおこない、分枝過程の基本再生産数に関する検定に対しても 単位根の逐次検定の数理統計学的手法が適用できることを確認した。 ウィルス感染の確率モデルとしての分枝過程は、国境閉鎖して海外からの感染者の移入がないモデル(移民項のないモデル)と、国境開いているとき海外からの感染者の移入があるモデル(移民項のあるモデル)に分けられるが、どちらもBessel過程によって記述され、Bessel bridgeで表されるが、時間変更により結合密度関数と結合ラプラス変換が計算できる。それらを用いて、刈込停止時刻を用いる方法、パワーの計算、検定統計量と停止時刻の結合モーメントといった重要な動作特性が計算されることをみる。
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Causes of Carryover |
年度末にコロナウイルスの影響で出張ができなかった。2019年度の未使用額は2020年度において感染症研究にフィッシャー情報を用いた停止時刻の研究を適用を行うための新資料(書籍)の費用として当てたい。
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