2018 Fiscal Year Research-status Report
Large Sample Theory for Bayesian Estimation of Moment Restriction Models
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18K01547
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
末石 直也 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (40596251)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経験尤度ベイズ法 / セミパラメトリックベイズ / Bernstein-von Mises定理 / 局所漸近正規性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、モーメント制約モデルのベイズ推定の方法について考察する。モーメント制約モデルは観測値の分布の関数形に仮定を置かないため、セミパラメトリックモデルとして位置づけられる。セミパラメトリックモデルは、パラメトリックモデルと比較して定式化の誤りを回避しやすい一方で、尤度関数を定式化しないため、古典的なベイズ手法ではパラメータを推定することができない。そこで本研究では、セミパラメトリックなベイズ法と経験尤度を疑似的な尤度として用いる経験尤度ベイズ法を提案し、2つの手法から得られる事後分布の漸近的な性質について考察する。 本年度は、セミパラメトリックベイズ法から得られる事後分布の漸近的な性質を示すための予備的な研究を行った。事後分布の漸近的な性質を示す定理として、Bernstein-von Mises (BvM) 定理がある。これは頻度論における中心極限定理に相当する結果であり、事後分布は漸近的には事前分布に依存せず、正規分布に収束するという結果である。セミパラメトリックモデルにおいては、Bickel and Kleijn (2012) がBvM定理を示しており、本研究でも彼らの結果を応用して、漸近的な事後分布を導出する。そこで必要となるのが、モデルの局所漸近正規性 (LAN; local asymptotic normality) と呼ばれる性質である。今年度は、i.i.d.のケースで、モーメント制約モデルのLANを示した。モーメント制約モデルのLANについては、Chamberlain (1987) とDovonon and Atchade (2016) によっても示されているが、BvM定理の証明に用いるために、既存研究とは異なる定式化によってLANを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究目的を遂行するためには、i.i.d.のケースでモーメント制約モデルのLANを示せば十分であるが、派生研究として時系列のケースへの拡張を考察していたため、当初予定よりもやや研究の進捗は遅れているが、挽回できる遅れではあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定を変更して、2019年度では、時系列データのケースでモーメント制約モデルのLANを示す。これは今年度に得られた研究成果により、実現の見通しが立ったものである。LANを示すことから得られる成果のひとつとして、モーメント制約モデルの効率性限界が求められる。モーメント制約モデルの効率性限界は、Chamberlain (1987) によってi.i.d.のケースで求められているが、時系列のケースでは長らく不明なままであった。時系列の場合で効率性限界が求められれば、それだけでも十分に貢献の大きい理論的な結果である。 さらに、2019年度では、当初の研究計画に基づき、セミパラメトリックベイズ推定量のBvM定理を示す予定である。 2020年度では、経験尤度ベイズ法の事後分布の性質を考察する。セミパラメトリックベイズ法では、ノンパラメトリックパートの事前分布を設定する必要があるため、実用上は計算不可が大きい。そこで、セミパラメトリックベイズの代替手法として、経験尤度をあたかもパラメトリックな尤度関数であるかのように扱ってベイズ推定を行う経験尤度ベイズ法について考察し、その事後分布についてBvM定理を示す予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の関係上、当初予定していた学会への参加を取りやめたため、差額が生じた。差額は次年度の旅費に充てたい。
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