モード回帰に対する計量手法の開発とその応用

2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K01553
• Research Institution: Kwansei Gakuin University
• Principal Investigator: 古澄 英男 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10261273)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: モード回帰 / ベイズ統計 / マルコフ連鎖モンテカルロ法

Outline of Annual Research Achievements

研究実施計画にもとづいて，実証分析を行うために必要なデータの収集・整理，新たなモード回帰モデルの開発，提案した計量モデルに対するマルコフ連鎖モンテカルロ法を利用した推定方法の開発，実際の経済データへの応用などを中心に研究を行った．2019年度における研究成果は以下の通りである．
1. 本研究において必要なデータ（具体的には教育支出に関するデータ）を収集・整理した．また，これらのデータを整理するために必要なプログラムの作成も行った．さらに，モード回帰に対する新たな計量手法の枠組みを構築するため，既存研究においてどのようなモデルや推定方法が提案されてきたかについて精査し，その問題点を整理した．
2. 前年度の研究成果にもとづき，誤差項に特定の分布を仮定しないセミパラメトリックなモード回帰モデルの開発を行った．より具体的には，ツーピース正規分布（two-piece normal distribution）を核とするディリクレ過程事前分布を用いた混合モデルの構築を行った．さらに，尺度パラメータだけでなく形状パラメータに関しても階層構造を持つようにモデルの拡張を行った．
3. 2.で提案するモード回帰モデルの尤度関数は非常に複雑であり，最尤法などの推定方法を適用することは困難である．そこで本研究では，マルコフ連鎖モンテカルロ法とよばれるシミュレーション法を利用した推定方法の開発を行った．また，数値実験や実データを用いた分析を通じて，本研究で提案する推定方法は既存の方法よりも実行が容易でかつ効率的であることを示した．
4. 1.で準備したデータを用いて，いくつかの実証分析を行った．その結果，これまでの計量モデルによる分析では分からなかった新たな知見を得ることができた．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

交付申請書の「研究実施計画」において，本研究では大きく4つの項目について研究を進めていくことが述べられている．そのうち，すべての項目において当該研究期間中に一定の研究成果が得られていることから，「(2) おおむね順調に進展している」と判断される．

Strategy for Future Research Activity

経済学では，多様なデータを分析する必要がある．そこで次年度は，これまでの研究成果を踏まえて，打ち切りデータや多次元データに対するモード回帰モデルの開発を行う予定である．また，モード回帰モデルの開発と並行して，必要なシミュレーション法を利用した推定方法の開発も進めていくことにする．本研究で提案する計量モデル・手法は適用範囲が広く，非常に有用であると考えられる．これらの有効性をさらに示すため，これまでに応用してきた分野以外でモード回帰モデルが利用できないか検討を進めていく予定である．これらの研究を通じて，モード回帰に対する新たな計量手法の枠組みの構築を目指すことにする．