2020 Fiscal Year Annual Research Report
Causal inference of the monetary policy effect
Project/Area Number |
18K01558
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
代田 豊一郎 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (80783951)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度までに進めていた研究を進捗させた。一つは、金利政策の状態依存性に関する分析であり、もう一つは資産買い入れ政策に関する状態依存性である。 第一に、金利政策の状態依存性に関する研究では、state dependent local projection modelを用いて、金融政策ショックのサイズによって金融政策の効果が変わりえるかを分析した。その結果、小さなショックのほうが、金利1単位当たりの変化でみた場合のGDPに与える効果が高いことを見出した。さらにこの背景には、最近の研究でも明らかにされつつある、情報効果が一定の役割を果たしていることも見出した。これらの結果は、各種の頑健性テストを行ったとしても変わらないことも確認した。 この研究の意義は、金利がこれ以上下げられないという制約があるなか、限られた利下げ余地をどのように有効活用するかという問題に対して、大胆な1回限りの政策変更よりも、小刻みに政策変更するほうが良いことを発見した点にある。本研究は、国際的査読誌(Macroeconomic Dynamics)に受理された。 第二に、資産価格買入政策に関する状態依存性に関する研究では、わが国の株式買入のデータを用いて、相場や買入規模などによって効果が異なりえるかどうかを分析した。その結果、相場の下落局面でかつ大規模に買い入れる場合のみ効果があることを見出した。 この研究の意義は、年間の買い入れ額を事前に決めて事前に買入れるよりも、相場の下落局面などに限定して買うだけで同等の効果を得ることができ、買入れ金額が少なくでも十分効果的な政策運営を行えることを示した点にある。本研究は、推定方法などについての改訂を行い対外公表を行ったところである。 これらに加え、インフレ目標を決めるうえで重要となる、経済構造とインフレのコストに関する研究が国際的査読誌(Journal of Money, Credit, and Banking)に掲載された。
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