2018 Fiscal Year Research-status Report
The Economics of Happiness in Transition Economies
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18K01559
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
樋渡 雅人 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (50547172)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移行経済 / 主観的厚生 / 社会的信頼 / ソーシャル・キャピタル / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「移行国生活調査(Life in Transition Survey)の個人レベルデータを用いた計量分析を進めた。同データは、移行諸国約30カ国において30000~50000世帯を対象に、2006年、2010年、2016年に実施された大規模調査に基づいている。社会的信頼と主観的厚生(SWB)の関係性については、昨年に実施した予備的分析の精緻化を進め、社会的信頼がSWBにもたらす正の効果を確認するだけでなく、状況依存的な関係性を明らかにするために、地域や国の違い、時系列な変化に着目した拡張的な分析を進めた。結果としては、中東欧等の移行諸国では、社会的信頼のインパクトが期間を通して長期的に低下する傾向が認められたのに対し、旧ソ連圏の移行諸国においては、2007年の世界金融危機によるショックを経て、近年では回復する兆しが見られる点などを見出した。本研究結果は、学術誌に投稿中である。 さらに、同データを用いて、SWB以外の主観的価値観にも観点を広げ、その決定要因に関する分析も進めた。特に、移行諸国においては、2000代後半以降、国外出稼ぎ移民の急増は、社会現象となってきたことに注目し、移民活動が、民主化や政治姿勢等の政治経済的価値観へもたらす影響を分析した。結果は、全体として、この時期、移民送出(送金受領)よりも、移民受け入れ(送金支払い)が、権威主義体制や計画経済への選好を高めてきたことを示唆するものであった。本研究は、2018年度の比較経済体制学会において報告したうえで、論文投稿の準備を進めた。 また、2018年9月にはウズベキスタンに渡航し、研究協力者らと分析結果を共有するともに、現地事情や関連研究に関する情報収集などを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中で、主要部分となる分析の結果がほぼ固まってきたという点で、研究は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の分析結果については、学術誌への論文投稿作業を進める。今後は、分析結果を補強するためのケース・スタディの実施や政策提言なども検討したい。
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Causes of Carryover |
今年度の9月の海外渡航には大学業務に従事する日程が含まれていたため、渡航費の一部に大学経費をあてられたことや、全国学会が申請者の勤務大学で開催されたことなどから、海外・国内旅費を大幅に節約することができ、次年度使用額が生じた。これらは、次年度に予定している海外調査(ウズベキスタン/ロシア)や国内学会に関わる旅費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)