2019 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study of decentralized development of infrastructure by local governments
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18K01561
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30516000)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 災害リスク / 交通投資 / 防災投資 / 分権的整備 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度においては、主に“shadow toll”を用いて、地域間における防災投資の最適化について研究を実施した。大規模災害が起こりインフラが使用不可能となるリスクへの対策として、①各インフラにおける堤防などの防災投資、②他地域のインフラの余剰容量と機能停止時のバックアップの確保、という2種類の施策が考えられるが、これらは各地域の分権的な投資の下では最適化されない。しかしながら我々の研究によれば、各インフラを地域間の共同投資プロジェクトとして整備し、かつ住民のインフラ使用に応じたシャドートールを収支に組み込むことで、上記の2種類の投資の両方に関して社会的最適が達成可能であることが、関数形を特定化しない2地域モデルで理論的に示された。地域間で共同利用するインフラを、中央政府の介入のない分権的意思決定により解決するメカニズムは既に示されていたが、この枠組みが地域間における災害リスクのシェアリングにも応用できることは、大きな発見であり、このような成果はこれまでに報告されていない。本成果は、2019年6月にパリ経済大学で行われたInternationa Transport Economics Associationの大会で報告され、多くのコメントが寄せられた。また、経済関係のネットワーク性と、その中での交通インフラ投資の役割について注目した理論研究や数値分析も並行して進めており、アジア地域科学セミナー、応用地域学会等でその成果の一部を報告するに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究は概ね順調に進捗していると言える。初年度には災害投資の分権的意思決定が非効率であることを示し、次年度はその解決のための汎用的メカニズムの開発に成功した。また、企業間取引の効果に着目しながら、一般均衡や租税競争モデルの枠組みにおける、災害や交通投資の影響についての数値的な研究を行ってきた。これらの成果は順次審査付き国際学会であるInternationa Transport Economics AssociationやEuropean Trade Study Groupなどで報告しており,初年度の論文については投稿に向けたブラッシュアップも進んできている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上でも述べたような、公的主体以外の投資や運営も含めた枠組みを理論的に検討する。また、災害リスクの評価を行うとともに、分権的投資の非効率の程度を数値的に理解するため、実際の港湾・空港利用データを用いた数値分析や実証分析を行う予定である。また、これらと並行して、過年度までの成果を出版に向けて投稿するとともに、学会等に参加して実証分析に関する議論を進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により、年度末に実施予定だった国内出張複数件が全て中止となったことで、予定に大幅な変更が生じた。一部の出張については今後延期する形で行うが、その上で生じた余剰については、ソフトウェア等のグレードアップや、RAによる作業の増加などを通じて、研究に資するように有効活用したい。
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