2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study of decentralized development of infrastructure by local governments
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18K01561
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30516000)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 交通インフラ / 共同整備 / 災害リスク / ネットワーク / 集積の経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は複数の論文を同時進行で進め、一定の成果が得られた。第一に、地域間における公共サービス共同供給を効率化するためのメカニズムについて、その必要条件となる公共入札制度の仕組みを理論的に分析し、投資を行う政府と事業者がともに「収支均等化ルール」に合意している必要があることを明らかにした。そしてこれらの研究成果をとりまとめ、査読付き海外ジャーナルに論文を投稿するに至った。 第二に、地域間における交通インフラリスクの相互担保についての理論的研究を行った。主な結果として、ある地域における防災のための投資は、結果的にインフラの利用料の上昇を通じて、地域間におけるリスクの相互担保機能を低下させる恐れがあることを明らかにした。また、これらの事実を実証的に説明するために、各自治体の過去の公共事業の情報を、再評価報告書に基づいて集計的に整理する作業にも着手している。 第三に、地域間の交通ネットワークが企業立地や投資に与える影響を分析する研究を実施し、それらの成果を報告した。第一に、独占的競争の枠組みで一般均衡を考えた場合、特に中間財供給を通じて集積の経済の影響が生まれるが、それを見落とすことで新幹線などの地域間輸送整備の効果が20%程度過小評価される可能性があることを指摘した。また、地域間の地理ネットワークの構造と企業間取引ネットワーク構造を同時に考慮しないことにより、自治体の企業誘致戦略に非効率性が生じることを理論的に示した。これらの結果は日本経済学会春季大会で報告し、査読付き英文学術誌に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題ではこれまでにいくつかの成果が出ているが、コロナ禍によって研究打ち合わせや学会発表が複数延期、中止したことで、一部研究計画に遅れが出ている。 第一に、災害リスクに直面した政府の差異的ンフラ整備計画についての理論研究は2018年に査読付き英文学術誌に掲載されている。また、地域間で交通を含めたインフラ機能を共同整備して共有するための効率的メカニズムについての研究もほぼ完了し、海外学術誌に投稿済みである。 しかしながら、2つの研究をさらに発展させ、地域間で交通インフラ機能をシェアして広域的な防災計画につなげるための研究は、20年度内に理論研究とデータ整備を進める予定であったものが、部分的にはいくつか注目すべき成果が出たものの、いずれも完成に至っていない。これはコロナ禍によりオンライン講義などへの対応の負担が増したことと、研究会などの共同研究打ち合わせに支障が出たこと、またデータ収集のためのRA雇用が困難だったことによるものである。また、コロナ禍の影響で学会発表も行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
21年度は、現在学術誌に投稿中の論文の修正作業を査読状況に応じて継続するとともに、未完成の研究課題である地域間におけるインフラリスクの相互負担問題の完成を目指して研究を行う。第一に、ここまでに実施した理論研究から、各インフラの防災投資がリスクの相互負担機能を弱める可能性があることが明らかになったが、そのことが自発的な防災投資にどのような社会的ゆがみをもたらし、またそれをどのようなメカニズム(補助金、投資費用負担ルールなど)によって解決されるべきかを、投資主体のタイプ(民間または地方自治体)ごとに区別して提案できるような理論的枠組みの構築を目指す。同時に、理論モデルを通じて明らかになった地域間における防災投資の波及効果を統計的に検証するための、公共事業再評価報告書の収集データベース整備の継続と、空間自己相関モデルを応用した実証分析を実施する。可能であれば、年度後半の学会報告を目指すが、学会の開催状況を見ながら来年度以降の成果報告を検討する可能性もある。
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Causes of Carryover |
海外出張と国内出張を複数回予定していたが、コロナ禍によりいずれも実施できなかった。また、同様にデータ整備のためのRA雇用環境確保が難しく、人件費の支出が困難だった。 今年度は、RAを雇用するとともに、データ分析のためのコンピュータおよびソフトウェアの購入を進める。学会発表の旅費使用については見通しが立たないが、オンラインも含めて学会参加と報告を積極的に検討する。
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