2018 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー市場とその不確実性を考慮した最適環境政策
Project/Area Number |
18K01565
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10377137)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境政策 / エネルギー政策 / 電力市場 / 不完全競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
電力産業の温室効果ガス排出量は多大で、環境への影響が甚大である。このため、化石燃料による発電を抑制し、再生可能エネルギーによる発電を促進する環境政策が、現実に各国で実施されている。特に米国では、キャップ・アンド・トレード方式の環境規制だけでなく、企業のパフォーマンスベースの環境規制を各州が選択的に導入できる仕組みになっている。本研究では、異なる市場構造のもとで、パフォーマンスベースの環境規制が社会厚生にどのような影響を与えるかを分析した。企業のパフォーマンスベースの環境規制は、実質的に、火力発電に「税金」を課し、他方で再生可能エネルギーによる発電に「補助金」を与えるのと同じ効果がある。このような税金と補助金の導入は、社会厚生に歪みを与えうる。実際、完全競争的な市場では、パフォーマンスベースの環境規制は、社会厚生の点でキャップ・アンド・トレード方式の環境規制よりも劣る。しかし、市場が寡占的な場合には、市場支配力の行使により発電量が抑制され、これにより税金と補助金のもたらす歪みが緩和されうる。この歪みを緩和する効果が相対的に大きい場合には、パフォーマンスベースの環境規制のもとで、完全競争市場よりも寡占的な市場において社会厚生が大きくなりうることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、電力市場の均衡を考慮した上での環境規制の最適水準を、二段階計画問題により分析することを一つの目標としている。本年度は、環境規制の水準を所与とした場合の市場の均衡や社会厚生の問題、すなわち、二段階計画問題のうちの下位問題を定式化し分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度の分析をもとに、二段階計画問題のうちの上位問題を定式化・分析し、社会厚生を最大化する環境規制の最適水準を導出する予定である。
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Causes of Carryover |
理由:2019年度に研究成果を国際学会で複数発表することとし、その旅費に充てるために次年度使用が生じた。 計画:2019年度に海外出張により、研究成果を国際学会で複数発表し、また海外研究者と研究上の意見交換を行う予定である。
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