2018 Fiscal Year Research-status Report
What causes the regional Balassa-Samuelson effect?
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18K01566
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
徳井 丞次 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (90192658)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地域経済学 / バラッサ・サムエルソン効果 / 地域間生産性格差 / 地域間サービス価格差 / 土地サービス投入 |
Outline of Annual Research Achievements |
サービス価格の水準に地域間で乖離があることを考慮に入れて都道府県別価格差指数を作成し労働生産性との相関をみると、正の相関を観察することができる。一方、国際経済学の分野では、先進国と発展途上国とを比較して前者の国内価格が後者の国内価格よりも高くなる傾向があることが知られており、こうした現象はバラッサ・サムエルソン効果と呼ばれている。国内の地域間で観察された価格差指数と労働生産性の関係は、これと類似の現象であり、地域版バラッサ・サムエルソン効果と呼ぶことができそうである。それでは、こうした類似の関係を成り立たせている背景要因も、国内地域間と国際間とで同じなのであろうか。先進国における貿易財部門と非貿易財部門との生産性格差に注目する国際版のバラッサ・サムエルソン効果の説明は、国内地域間で同様には成り立っておらず、地域版バラッサ・サムエルソン効果には別の背景要因の説明が必要となる。本研究では、その背景要因として、地域間の地価に起因する要因と、地域間の労働コストに起因する要因の二つを考え、両者の重要度を比較した。こうした研究を行うには、整合的な都道府県レベルの産業連関表と、通常は要素所得の営業余剰のなかに混ぜ込まれてしまっている土地サービス投入コストを推計する必要がある。こうしたデータ整備作業を2005年について行い、産業連関分析の価格モデルを適用して、土地サービス投入コストと労働サービス投入コストの価格波及を計算し、地域間価格差への波及にどちらがより重要かを分析することを目的にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、互いに整合的な都道府県別産業連関表の作成と、都道府県別・産業別の土地サービス投入の推計を行った。都道府県別産業連関表の作成においては、各都道府県から既発表の2005年産業連関表をベースに、産業分類を23部門分類に合わせるように調査したほか、本社活動の取り扱いが東京都とその他の道府県で異なることに留意し、東京都の産業連関表を修正して他の道府県の作成方法と整合的になるように修正を加えた。 都道府県別・産業別の土地サービス投入の推計については、総務省「固定資産価格概要調書」から都道府県別の商業地と工業地の固定資産金額をベースにして、R-JIPデータベースの資本ストック、法人企業統計(全国ベース)の土地と有形固定資産、工業統計の土地ストックなどを使って、都道府県別・産業別の土地ストックをまず推計した。これを、都道府県別・用途別の地価上昇率、金利、固定資産税率、法人税率から作成したユーザー・コストを使って土地サービスのフロー金額に変換した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の作業で、2005年分のデータについて整合的な都道府県別産業連関表、そこから得られる都道府県別・産業別の労働コスト、総務省「固定資産価格概要調書」をベースに推計した都道府県別・産業別の土地サービス投入額が準備できた。今後の作業は、各都道府県の移輸入を調整した投入係数からレオンチェフ逆行列を求め、それを転置した価格モデルを使って、労働コストと土地サービス投入のそれぞれの価格波及を計算する。その結果を使って、地域間のサービス価格差に地域の労働コストと土地サービス投入がそれぞれどの程度寄与しているかを求め、バラッサ・サムエルソン効果の背景要因を検討する。
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Causes of Carryover |
2018年度はデータ作成作業に時間をとられた。今後、準備したデータを使って分析を進めていくので、その結果を国内や海外の研究会などでも発表する機会が増えると予想される。次年度に繰り越した予算は、こうした目的に使用することを計画している。
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Research Products
(4 results)