2021 Fiscal Year Research-status Report
An analysis of trade and the environment using general oligopolistic equilibrium
Project/Area Number |
18K01576
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉山 泰之 福井県立大学, 経済学部, 教授 (00533605)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | GOLE / Environmental Policy / Trade liberalization / Skill premium / wages |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、寡占の一般均衡理論を貿易と環境の問題に応用し、「多数の産業で国際的な寡占競争が繰り広げられているとき、環境政策の強化や貿易の自由化は、国内外の賃金水準や雇用にいかなる影響を及ぼすのか。そして、この影響は経済活動や環境問題にどのように波及するのか。」を分析する。具体的には、(Ⅰ)熟練、非熟練労働者の賃金水準とその相対賃金率(スキルプレミアム)の内生的決定、(Ⅱ)寡占競争モードの内生的決定を含む統一的なモデルを構築し、競争モードの変化に応じて総排出量や最適な環境政策の水準がどのように推移していくのか、また、貿易自由化はこの経済と環境にいかなる影響を及ぼすのかを明らかにすることである。 令和3年度については、本研究課題の基礎となる論文「寡占の一般均衡における貿易自由化と環境の分析」を『福井県立大学経済経営研究』 第44号において公表した(査読あり)。この論文では、国内に貿易財産業と非貿易財産業の両方が存在する寡占の一般均衡モデルを想定し、貿易財産業における輸送費の低下、すなわち貿易の内延の拡大に加え、貿易財産業の割合の増加、すなわち貿易の外延の拡大が、価格の2次モーメントと総排出量にいかなる影響を与えるのかを、賃金率の変化を通じた間接的な影響も含めて明らかにしている。 具体的には主要な結論として次の3つを得た。(1)輸送費の低下は賃金水準を上昇させる。一方、貿易財産業の割合の増加は賃金水準を低下させる可能性がある。(2)貿易財産業の排出係数が非貿易財産業よりも小さいほど、また貿易財産業の必要労働量が非貿易財産業よりも大きいほど、輸送費の低下が総排出量を減少させる可能性は高くなる。(3)貿易財産業の排出係数が非貿易財産業よりも小さく(大きく)、かつ貿易財産業の割合が1/2を上回るならば、貿易財産業の割合の増加は総排出量を減少(増加)させる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は本研究課題の基礎となる論文「寡占の一般均衡における貿易自由化と環境の分析」を『福井県立大学経済経営研究』 第44号において公表した。この論文は、寡占の一般均衡理論の分析手法を使用して貿易自由化が汚染物質の排出量に与える影響を考察した論文であり、本研究課題の目的に沿うものである。 また、令和3年度は、令和2年度に書き上げて投稿した環境産業におけるスキル形成の役割に応用した論文と、国際寡占競争下における環境産業の役割を分析した論文を、どちらも改訂し、あらためて投稿した。これらの研究は、公共教育が環境産業で働くためのスキル形成と熟練・非熟練労働者の賃金水準に与える影響や、環境財輸入国の排出税、関税、環境産業への補助金などが国内外の環境産業に与える影響などを明らかにしており、本研究課題の主題を補完するものである。 本研究課題の基礎となる論文「寡占の一般均衡における貿易自由化と環境の分析」は公表できたものの、環境政策と貿易自由化の関係についてはまだ分析できていない。また、スキルプレミアムの内生化や寡占の競争モードと環境政策や貿易政策の関係についても、依然としてモデルの検討が続いている。
これらの点を踏まえて「やや遅れている」を選択した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度については、外部不経済を伴う寡占の一般均衡モデルにおいて、少なくとも(1)環境政策と貿易自由化の関係を明らかにした論文、(2)熟練、非熟練労働者の賃金水準とその相対賃金率(スキルプレミアム)の内生的決定、またはその代わりとして、交渉を通じた賃金率の内生的決定を踏まえて貿易と環境の関係を考察した論文、の2本は書き上げたい。さらに、(3)寡占の競争モードと環境政策や貿易政策の関係についても、生産活動からの汚染物質の排出をどのように描写するのかの検討を終え、具体的にモデルを構築するところまでは進めたい。 本研究課題はさらに1年間の延長の形で最終年度を迎えることから、(1)、(2)について何とか2本の論文を書き上げ、投稿作業までは終えたい。その上で、(3)寡占競争モードの内生的決定を踏まえた貿易と環境の分析を試みる計画である。 学会報告などを通じて着実に研究の成果を公表すると共に、上手くいかなかった点についてはその原因をしっかりと分析したい。そして、最終的には(3)に関する研究の成果を論文として公表し終えるまで、本研究を継続していきたい。
|
Causes of Carryover |
令和3年度は学会報告などの際の旅費や人件費・謝金に対して全く支出がなかった。
(使用計画) 令和4年度は論文の執筆と公表に重点をおき、作成した論文の英文校正、投稿料などによる支出を中心とし、必要に応じて関連論文のPDFファイルでの購入を予定している。
|