2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01585
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
伊ヶ崎 大理 日本女子大学, 家政学部, 教授 (10336068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 美紀 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (50437282)
内藤 徹 同志社大学, 商学部, 教授 (90309732)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人口減少 / 出生率 / 無子率 / 集積 / 子育て支援 / 経済成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者(伊ヶ崎)は少子化を考える際に重要な論点の一つとして注目されている「子どもを持たない家計の比率の上昇」という問題を取り上げた。そしてそのような家計の比率が上昇することが、資本蓄積、出生率、地域間の人口移動などに代表される本研究テーマを取り扱う上での重要な変数に及ぼす影響について分析した。具体的な成果は以下のとおりである。第1に、複数地域モデルを用いて、子供を持たない家計の比率の上昇が経済全体に及ぼす影響について検討した。都市と農村の人口比率がどの程度違うのかによって、子供を持たない家計の比率の上昇が経済に及ぼす影響も異なってくる。第2に、子供を持つか持たないかが家計の意思決定によって、内生的に決定されるモデルを構築した。そのモデルでは、子供に対する選好の変化の結果生じる無子率の上昇によって、すべての家計の厚生が悪化する可能性が高いことが示された。さらに、子育て支援政策は子どもを持つ家計だけではなく子供を持たない家計の厚生も上昇させる可能性が高いことを明らかにした。 分担者(内藤)は、自然資源からくる収益の地域間の再分配が地域間の対立や地域間の関係に及ぼす影響を考察した。このテーマは地域ごとの出生率の相違や地域間の所得再分配が地域間の出生率の相違に及ぼすを検討する際の基本モデルとして使用できる。このモデルを出生率についての議論に拡張することにより、本研究テーマに寄与することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者(伊ヶ崎)は、研究成果を国際学会(Association of Southern European Economic Theorists)で報告するほか、海外の大学より依頼を受けてセミナーにおいて、本研究テーマと直結する論文の報告を行った(Seminario ICEI de Investigacion (ICEI reserch seminar)にて報告した)。その結果、2020年度において研究成果を公刊できるめどが立った。具体的には、Springer社から出版され、伊ヶ崎自身が編著者を務める英文の学術書において、研究成果を発表することを計画している。また、そのほかに欧文誌への投稿も行っている。分担者である内藤も論文を公刊し、複数の学会報告も行ったほか、松尾もデータの収集や先行研究のサーベイなどを通じて研究成果を発表できる段階まで来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降では、前年度までにそれぞれの分野において行われた研究の統合を試みる。現段階では、地域間の人口移動が都市ごとの出生率や短期・長期の経済成長に及ぼす影響、児童手当などの金銭的な援助が出生率に及ぼす影響ついての理論モデルの構築については、ある程度の方向性ができた。そのため、これらのモデルをさらに拡張し、児童手当のような直接金銭を配布する政策だけではなく、保育所の整備などに代表される子育て環境を整備するような政策が経済成長や地域ごとの出生率の動態的挙動に及ぼす影響も検討する。さらに、これらのモデルの妥当性やモデルで導出された結論の頑強性を各国のデータをもとにした実証分析を通じて確認する。また、現在の少子化の背景には、若年層の雇用の不安定化、およびそれがもたらす非婚化・晩婚化などもある。我が国における社会保障政策は若年層への配分が薄いということも指摘されているため、上記の児童手当や保育所の整備だけではなく、「若年層への社会保障」やそれに伴う政治経済学的問題も分析の視野に入れる。特に新型肺炎の問題は若年層の雇用の在り方に影響を及ぼす可能性もあるため、新型肺炎の問題が出生率に及ぼす影響も分析する。得られたれた成果は関連する国内外の学会(日本経済学会、RSAIなど)で報告し、欧文査読誌への投稿・公刊を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者の伊ヶ崎は2019年度に海外研修でスペインに滞在した。そのため、予定していた国際学会への参加において、大幅に交通費が節約できた。また、2020年において、新型肺炎の問題のため、出張を取り消さざるを得なくなったことも当初より計画を変更した理由として挙げられる。2020年度以降も積極的に国際学会などへの参加や研究成果の公刊をしていきたいと考えているが、新型コロナウイルスの問題もあるため、再度の変更を余儀なくされる可能性もある。
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